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その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY   第10回『百円硬貨』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、先月に続いて『傑作推理劇場』より、1981年作品『百円硬貨』をご紹介します。『傑作推理劇場』の詳細については、当コラムの第8回をご参照ください。

 

『百円硬貨』の原作は、松本清張先生。古くは1950年代から、松本清張先生の作品は頻繁に映画化・テレビドラマ化がなされてきましたが、特にテレビ界で「2時間ドラマ」が隆盛を誇った80年代は、どの局もこぞって、「確実に視聴率が獲れる」清張作品の映像化に力を入れていました。同じ原作が繰り返し映像化されることも多く、脚本や演出、キャスティングなどを比較して楽しんでいる方も、けっこういらっしゃるのではないでしょうか。

この『百円硬貨』は、1978年に「小説新潮」に掲載された後、翌年に発行された短編集「隠花の飾り」に収録された短編。1981年に放送された本作が、初の映像化でした(後の1986年6月、フジテレビ系列の関西テレビの製作により、池上季実子さんと奥田瑛二さんの主演で再び映像化されています。ちなみに、2人が共演した『男女7人夏物語』は、同年7月のスタートでした)。

本作のプロデューサーは高橋正樹さん(テレビ朝日)と阿部征司さん(東映)。監督が野田幸男さん、脚本が橋本綾さん、助監督に三ツ村鐵治さんと、『特捜最前線』(77~87年)に関わった方々の名前が並びます。野田監督は、東映では言うまでもなく『不良番長』シリーズのメイン監督(第1作をはじめ、全16作のうち11作を担当)として有名ですが、1970年代後半からは、主にテレビ作品で活躍。『傑作推理劇場』では、すでに東映チャンネルで放送済みの1980年作品『殺意』(主演:坂口良子)に続く登板でした。

 

いまはあまり見かけなくなった公衆電話で、悲壮な表情を浮かべて、相手と話しているひとりの女性がいました。彼女の名は大川伴子(いしだあゆみ/原作では「村川伴子」)。伴子はどうやら「すべてを捨て」て、ひとりの男と添い遂げる決心をしたようです。「明日の朝、必ず迎えに来て」と約束して、伴子は東京駅から新幹線に乗りました。合計13時間の旅を終えたころ、彼女は山陰の田舎町に着き、男の胸に飛び込んでいるはずでした――。

話は、伴子が男と出会った、4年前へとさかのぼります。伴子は、小さな銀行の出納係として働く、28歳の女性でした。毎日、毎日、銀行と自宅のアパートを行き来するだけの、変わり映えのしない日々(伴子という名前は、判で押したような生活を送る女性というイメージから来ているのかもしれません)。ある朝、彼女は通勤のためにバスに乗り込む際、慌てていたのでうっかり百円を落としましたが、いつもと同じバスに乗ることを優先しました。この「百円硬貨」が、後に自分の人生を左右することになるなんて、伴子は全く考えもしませんでした――。

この退屈な人生を変えたいと、漠然と考えていた伴子は、バス通勤の途中で目にとまった自動車を購入したいと思い立ちます。セールスマンを通じて、その自動車を購入した伴子。彼女の人生は確かに変わりました。この一件を通じて知り合った、妻子持ちのセールスマン・細田龍二(川地民夫)と不倫の関係に陥ったのです。

やがて伴子は細田との結婚を考えるようになりました。細田のほうも同じ気持ちでしたが、細田は妻(上村香子)との間に6歳の長女もおり、夫婦仲こそ冷えているものの、妻は別れる気など毛頭ないようでした。

しかし、あるときを境に、状況が変わりました。慰謝料3000万円を出せば、妻は細田との離婚に応じると言うのです。どうしても細田と結婚したい伴子は、自分の勤め先から、金を横領するという行動に出ました。長年にわたって銀行で毎日、同じ仕事を続けてきた伴子には、「完全犯罪」を成功させる自信があったのです。ある土曜日の午後、伴子の「犯行」は完了しました。そして彼女は東京駅近くの公衆電話から山陰の田舎町で待つ細田に連絡して、新幹線に飛び乗ったのでした。果たして、伴子の人生を賭けた「完全犯罪」の行方は……?

 

つい、主人公に感情移入して観ていると辛くなってしまう、あまりにも皮肉なラストが待ち受けています。伏線の張り方の巧さは、さすがに清張先生というところでしょう。なお、本作のオチは、現在の世の中では成立しにくい(全く同じ状況になること自体は考えられるものの、オチの「切れ味」としては落ちる)ことを補足しておきます。もちろん、そのことが本作のクオリティを左右するわけではないので、念のため……。

いしだあゆみさんが演じる伴子は、回想で描かれる「28歳」の時点で、職場で「オールドミス」と呼ばれている設定。ここにも、結婚適齢期が若かった時代と現在の大きなギャップを感じます。1981年のいしださんといえば、映画『駅 STATION』で高倉健さんが演じた主人公の別れた妻を演じたり、テレビドラマ『北の国から』でも、同じく主人公・黒板五郎(田中邦衛)の妻を演じたり、といった時期。そもそも伴子のような「婚期を逃した女性」のキャスティングとしてリアリティがあるのか、とも思ってしまいますが、そこは流石にいしださんで、素晴らしい役作りで説得力を与えていました。いしださんの渾身の演技だけでも、本作は一見の価値アリと言えるでしょう。年の瀬、何かと忙しい時期になりますが、放送日にはぜひ、テレビの前に座っていただければ幸いです。

 

それでは、また次回へ。なお、12月の「違いのわかるサスペンス劇場」では、本作のほか、同じく『傑作推理劇場』1981年作品より、『雪の螢』(原作:森村誠一/監督:浦山桐郎/出演:大空眞弓、河原崎長一郎ほか)も放送されます。『火曜サスペンス劇場』の1986年作品『あなたから逃れられない』(原作:小池真理子/監督:長谷部安春/出演:佐藤友美、仲谷昇ほか)も久しぶりの放送ですね。これらの作品群もぜひ、ご堪能ください!

 

文/伊東叶多

 

<放送日時>

『百円硬貨』

12月7日(土)13:00~14:00

12月21日(土)14:00~15:00

 

『雪の螢』

12月7日(土)14:00~15:00

12月21日(土)13:00~13:50

 

『あなたから逃れられない』

12月14日(土)13:00~14:50

12月28日(土)13:00~14:50

2019年11月26日 | カテゴリー: その他
かめぽん

チューもく!! ぎらぎらした輝き。今も魅力的な無二の人 松田優作

昭和の子供なら「なんじゃ、こりゃー」と言えば彼の人の顔を思い出すに違いない。くしゃっとした髪の毛、鋭い瞳、低い声。背が高くて、すらっとして、印象的な彼、松田優作さん。「セントラル・アーツの軌跡 特別篇 松田優作メモリアル」と銘打って没後30年の大特集の前編を今月放映。
30年も経ったのか…と、月日の流れの速さに驚愕したかめぽん。「ブラックレイン」でハリウッド作品で非常に印象的な役を演じての急逝。本当に惜しいと思った。個人的には「なんじゃ、こりゃー」な刑事さんなど、TVの優作さんしか実はあまり知らないかめぽん。この特集でじっくりと優作ワールドに浸るつもりだ。で、個人的には桃太郎な息子さんが好き。ご兄弟でお父さんとは違った個性で活躍されているのを観るのも楽しみなのである←親戚のおばちゃん目線

 

201911

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
今月はこちらもメモリアルな特集「高倉健×菅原文太 共演全12作品アンコール放送!前篇」。全12作と意外と共演が少ない文太さんと健さん。こちらの男の対決も楽しみ。
「東映動画 名作アニメ劇場」ではかめぽんの大好きな森康二さんの動物たちが楽しめる「どうぶつ宝島」を4Kレストア版で放映。○で描がかれる動物たちの愛らしさ、本当に素晴らしい森ワールドを見ていただきたい。
アニメ、特撮、やくざに時代劇(橋蔵さんが美しい「雪之丞変化」と錦之助さん(の役)が江戸時代にタイムトリップする「森の石松鬼より恐い」が楽しみ)、そしてシェゲナベイベーな内田裕也さん主演のミステリーエロス『エロチックな関係R15+版]』など色っぽいものまで今月も盛りだくさん。

今月も、わくわくな東映チャンネルをお見逃しなく〜

2019年11月1日 | カテゴリー: かめぽん