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むちゅー刑事
本名:ヒライズミ
棲息地(勤務地):「警視庁銀座懲怒街警察署刑事課
特徴:映画、ドラマに精通し、旨いメシ旨い酒にうるさい。
好きな言葉:「ドブネズミみたいに美しくなりたい」アーカイブ
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日別アーカイブ: 2021年4月22日
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チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第27回『花柳幻舟獄中記Ⅱ』
今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、前回ご紹介した『花柳幻舟獄中記』の続編にあたる、1985年の『月曜ワイド劇場』作品『花柳幻舟獄中記Ⅱ』をご紹介します。前作の放送は1984年5月でしたが、それから約1年を経て、今回はなんと4月1日という、実質的な「期首特番」扱いとなりました。1984年4月の第1週&第2週には、テレビ朝日開局25周年記念番組として『花も嵐も踏み越えて 女優田中絹代の生涯』前・後編(高橋かおり、秋吉久美子、乙羽信子がリレー形式で田中絹代を演じたドラマで、2週とも3時間枠が用意された)が放送されていたことを考えれば、いかに本作が局側の期待を受けていたか、容易に想像できるでしょう。構成の中島信昭さん、脚本の掛札昌裕さんは前作から続投し、監督のみ、野田幸男さんから森崎東さんに交代しました。森崎監督は松竹出身。後にフリーとなり、1980年代には『時代屋の女房』(83年/主演:渡瀬恒彦、夏目雅子)、『塀の中の懲りない面々』(87年/主演:藤竜也、柳葉敏郎)などを手がけています。2013年の『ペコロスの母に会いに行く』が最後の監督作となりましたが、この作品はキネマ旬報ベスト・テンで日本映画1位に選ばれるなど、高い評価を得ました。2020年7月、惜しくも逝去されています。
さて、物語ですが、前作をご覧になった方ならばお分かりのように、『獄中記』にあたる部分は、すでに映像化されていました。そのため、パートⅡとなる今回の副題は『女子刑務所 花の同窓会』。冒頭こそ、前作のラストをなぞる形で(ただし、映像は流用ではなく新撮されています)「仮出獄」までの数日間がダイジェスト的に描かれますが、そこからラストまでは「出所後」のお話となりました。
傷害罪で服役していた舞踊家・花柳幻舟こと川井洋子(花柳幻舟)は、刑期満了前に栃原刑務所(実際は「栃木刑務所」)を仮出獄することになりました。さまざまな思い出が脳裏をよぎりつつも、逞しい幻舟は、この“貴重な経験”を今後の活動に存分に活かしていくことしか考えていませんでした。早速、「出所記念公演」で派手な復帰を果たした幻舟は、そこで自分よりも先に出所していた中野佐代子(萩尾みどり)と再会します。幻舟、佐代子、そして菅野セツ子(奈美悦子)が集まったのは、やはり栃原刑務所での服役経験を持つ女将(園佳也子)が経営する焼き鳥屋「栃原」。しかし、懲りずにまた新たな悪事に手を染めようとしていた者もいて……。
全編の大半が「刑務所内」の話だった前作は、やむなく罪を犯した者たちにとって、外の世界よりも、むしろ閉じられた世界である“獄中”での生活のほうが幸せなのかもしれない、という物悲しさがテーマとなっていました。そこから続く物語である本作は、出所後がメインということで、導入部は希望を感じさせるものの、むしろ前作よりも「観ていて辛い」展開が待っています。これは意外というより、前作から一貫したテーマを訴えている本作では「順当」な流れだといえるでしょう。後半、幻舟さんは「前科者」に対する人々の態度の中から、“建前”に隠された“本音”を次々と感じ取っていきます。森崎監督は、こうした人々の様子を敢えて、ちょっと戯画的に演出することにより、おそらく幻舟さんが現実でも直面したであろう「違和感」を際立たせました。ここまで「前科者」サイドに感情移入させてしまう作りは確信的で、さすがに現在のテレビ界では本作のような企画は成立しにくいでしょう(シンプルに考えても、わずか数年前の事件の当事者が自ら「本人」役で主演し、しかも犯罪シーンまで再現するというドラマなど、昨今のように何から何までクレームの対象となるご時世では、そもそもスポンサーがつきづらいはずです)。ただ、それゆえに、本作の存在は極めて貴重なものとなっています。
少々「惜しいな」と思ってしまうのは、せっかくの続編にもかかわらず、前作とのつながりが薄い点です。とはいえ、これは今回のように4月、5月と連続して放送されるから感じることであり、本放送当時は、前作の内容を細かく覚えている視聴者など少なかったでしょうから、製作サイドも、そこまでこだわっていなかったのかもしれません。前作から、役柄も含めて続投しているのは幻舟さんの父親役・和崎俊哉さんや、ある理由から出所を極度に拒む赤城ヤエ役の白川和子さん程度。前作では目立っていた刑務所の保安課長役・上月左知子さんは展開上、本作ではほとんど出番がなく、また前作と同じく女囚役ながら、なぜか役名は異なる立石凉子さんのようなパターンもありました。
一方で、期首特番扱いということもあってか、助演陣は全体としてはより豪華になっています。弁当屋で真面目に働き始めた佐代子を見初める、食品会社の専務役には河原崎長一郎さん。「事件」前まで幻舟さんの考え方を支持していた文芸評論家役に仲谷昇さん。そして幻舟さんの元・恋人役には、当時『特捜最前線』にレギュラー出演中だった誠直也さんが扮しています。これに加え、幻舟さんと交流のあった意外な「文化人」たちもカメオ出演。実名で登場し、しっかり「台詞」もありますので、ご注目ください。
それでは、また次回へ。5月の「違いのわかる傑作サスペンス劇場」では本作のほか、1991年の『水曜グランドロマン』より『別れてのちの恋歌』(監督:井上昭/出演:大竹しのぶ、堤真一、田中邦衛、西田健ほか)、1982年の『火曜サスペンス劇場』より『死の断崖』(監督:工藤栄一/出演:松田優作、夏木マリ、竹田かほりほか)、1993年の『サスペンス・明日の13章』より『変身 もう一人の私』(監督:黒沢直輔/出演:伊藤かずえ、蟹江敬三ほか)、1988年の『京都サスペンス』より『マルゴォの杯』(監督:山下耕作/出演:岩下志麻、奈良岡朋子、石橋蓮司ほか)が放送されます。これらの作品群も、ぜひご堪能ください。
文/伊東叶多(Light Army)
<放送日時>
『花柳幻舟獄中記Ⅱ』
5月7日(金)13:00~15:00
5月22日(土)22:00~24:00
5月28日(金)17:00~19:00
『別れてのちの恋歌』
5月7日(金)17:00~19:00
5月21日(金)13:00~15:00
『死の断崖』
5月14日(金)13:00~15:00
5月21日(金)17:00~19:00
『変身 もう一人の私』
5月7日(金)19:00~20:00
5月14日(金)18:00~19:00
『マルゴォの杯』
5月14日(金)17:00~18:00
5月21日(金)19:00~20:00
2021年4月22日
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