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チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY                              第40回『悪魔が忍び込む』

今月で第40回を数えた「東映テレビドラマLEGACY」。今後もご愛読のほど、よろしくお願いします。さて、今回ご紹介するのは1985年の『火曜サスペンス劇場』作品より、『悪魔が忍び込む』です。放送日は7月2日で、この回より、エンディング・テーマが1年ぶりにリニューアルされ、3代目の「橋」から4代目の「25時の愛の歌」へと代わりました。『火サス』のエンディング曲は1981年の番組スタートから1987年の秋まで、6年間にわたって岩崎宏美が歌唱を担当。「25時の愛の歌」は、初代の「聖母(マドンナ)たちのララバイ」に続いて長く使用された曲なので、印象に残っている方も多いのではないでしょうか。ちなみに、1985年7月当時の『火サス』の裏番組にはフジテレビ『なるほど!ザ・ワールド』のほか、TBS『サーティーン・ボーイ』(主演:岡本健一)、テレビ朝日『ただいま絶好調!』(主演:舘ひろし)などがありました。

 

看護師として働いていた佐藤すみ子(浜木綿子)は、最初の結婚で長女・しのぶ(早川美也子)を産みましたが、夫と死別。女手ひとつで娘を育てていくため、クラブで働くようになりました。あるとき、すみ子は店長の冬木(睦五郎)から再婚の話を持ちかけられます。相手は、大手企業で部長を務める岩渕勝(伊東四朗)でした。岩渕は、すみ子に一目惚れ。しのぶという娘がいることも承知で、彼女との結婚を望んでいました。やがて、すみ子は勝の母・チカ(清川虹子)とも会い、岩渕との結婚と、チカと勝が暮らす家での同居を決断します。しのぶも、すでに小学生になっていました。

ところが、ある時期を境に、チカは急に、すみ子やしのぶに冷たくあたるようになりました。老人会でチカと仲良くしている吉川(浅香光代)という女性からも、すみ子は嫌味を言われる始末。どうやらチカは、あることないこと、老人会で仲間たちに吹聴しているようでした。なぜ、チカの態度が急変したのか? その時点では、すみ子には全くわかりませんでした。義母や自分をいじめるチカへの嫌悪感から、しのぶはチカに対し、激しく反抗するようになります。しかし、その程度のことで、チカが怯むことはありませんでした。

ただし、チカは持病を抱えていました。狭心症です。すみ子がチカを病院へ連れて行ったところ、武内医師(横光克彦)は2種類の薬を出してくれました。武内は、すみ子が元・看護師だと聞き、「力強い味方がいる」とチカを励ましますが、そんなことで、チカのすみ子に対する感情は変わりません。むしろチカは、自分がすみ子に殺されるかもしれない、などと人聞きの悪いことを遠慮なく、言い出すようになっていきます。

そしてまた、ある日のこと。チカは、しのぶの反抗的な態度に腹を立て、そのために狭心症の発作を起こしました。すみ子が外出していたこともあり、チカは自分で急いで薬を探しますが、なぜか、置いてあるはずの場所に薬が見つからず……!

 

というわけで、ここまで読んでいただいた方は、この作品に「嫁・姑の関係を軸にしたサスペンス」といった印象を抱かれたことでしょう。それ自体に間違いはありません。「嫁」であるすみ子に対して、これでもかと悪態をつくチカ。清川虹子さんの、「一般視聴者に嫌われても構わない」と言わんばかりの熱演ぶりが光ります。当時、すでに70歳を過ぎていたとはいえ、本作の2年前に映画『楢山節考』に出演するなど、第一線で活躍を続けていた清川さんに加え、劇中のチカの「援軍」として、剣劇女優として知られた浅香光代さん(老女・吉川役)も参戦しているのですから、すみ子も分が悪そうです。ひたすら耐え続ける、すみ子。彼女にとって最大の味方は娘のしのぶであり、また夫の岩渕勝であるはずなのですが、しのぶの態度が母・チカを苦しめている一因になっていると考えた勝はやがて、しのぶに対しても疑念を持つようになり、すみ子と勝の間にも、深い溝が……。

 

そんな本作ですが、前半で張られていた伏線が、後半で見事に回収されていきます。密度的には、後半は前半の倍くらいのイメージ。チカのすみ子に対する態度が急に変わった原因は何か? 大事な薬の置き場所は、どうして変わっていたのか? そして、それは「誰」が変えたのか? さまざまな謎が明らかになっていくのと並行して、憎しみが支配していた物語の中から「愛」が見えてくるという構造が秀逸で、「嫁・姑の話は苦手だな……」という方にも、ぜひご覧いただきたい作品となっています。もちろん、タイトルに「悪魔」と入っているように、人間の<悪意>もポイントなので、随所で発見できる<悪意>の巧みな描かれ方にも、ご注目ください。

最後に、例によって、ストーリー紹介部分で触れられなかった、他のキャストについて紹介しておきましょう。勝の兄で、チカとの同居を拒否していた岩渕修を演じたのは、穂積隆信さん。老人会「憩いの家」における長老格の老人を演じたのは、当時87歳の佐々木孝丸さんでした。資料によれば、本作が長いキャリアにおける最後の作品である可能性が高そうです。後半、重要な「証言者」として登場する堀川朋子を演じたのは、1980年代の時代劇や刑事ドラマでは欠かせない存在だった佐藤万理さん。しのぶが通う小学校の用務員は相馬剛三さんが演じています。

……それでは、また来月の当コラムにて、お会いしましょう!

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

<6月の『Gメン’75』>

6月が初回放送となるエピソードは、第47話から第56話。第47話「終バスの女子高校生殺人事件」は、ラストで明かされる事件の「真相」に衝撃を受けること間違いナシの傑作回です。その他にも第49話「土曜日21時のトリック」や、第56話「魚の眼の恐怖」など必見回が続々登場。ぜひ、ご期待ください。

 

【違いのわかる傑作サスペンス劇場/2022年6月】

<放送日時>

『悪魔が忍び込む』

6月3日(金)11:00~12:50

6月14日(火)21:30~23:30

6月27日(月)21:30~23:30

 

『女が見ていた』(監督:鷹森立一/主演:泉ピン子)

6月2日(木)13:00~15:00

6月10日(金)11:00~13:00

6月23日(木)22:00~24:00

 

『異人館の遺言書』(原作:和久峻三/出演:フランキー堺、春川ますみほか)

6月16日(木)11:00~12:00

6月24日(金)11:00~12:00

 

『暗い穴の底で』(原作:菊村到/脚本:長坂秀佳/監督:天野利彦/主演:近藤正臣)

6月17日(金)11:00~12:00

6月24日(金)12:00~13:00

2022年5月31日 | カテゴリー: その他