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チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 特別編(第16.5回)     『刑事くん』第2シリーズ、いよいよ放送スタート!

「さて来週、4月16日からはみなさまのご要望に応え、熱血漢・桜木健一の『刑事くん』がふたたび登場します。盗みの疑いをかけられた三神鉄男は、犯人捜しに乗り出したが、鉄男がそこで見たものは、ささやかな夢を求める若者の姿であった。鉄男は決心した。刑事でなければ、できないことがある。もう一度、刑事になろう。第1回『刑事くん/ぼくたちの春』は、千葉真一をゲストに迎えてお送りします。どうぞ、お楽しみに!」

(新番組予告より/ナレーション:村越伊知郎)

 

……というわけで、6月29日からはみなさまのご要望に応え、熱血漢・桜木健一の『刑事くん』がふたたび東映チャンネルに登場します。これを記念し、「東映テレビドラマLEGACY」も特別編(第16.5回)として『刑事くん』をご紹介。1970年代の「30分ドラマ」では人気の面でも内容においてもトップクラスに位置する本作が後世に語り継がれていくことを願って――。

 

そもそも『刑事くん』は、“スポーツ&根性もの”ブームの一翼を担ったドラマ『柔道一直線』(69~71年)の主演で青春スターの座をつかんだ桜木健一さんの、次なる活躍の場として用意された作品でした。

 

実際には『刑事くん』より前に、『柔道一直線』と同じく梶原一騎先生の原作、桜木さん&吉沢京子さんの主演、東映の製作で『太陽の恋人』という学園ドラマ(1時間枠)が放送されていましたが、こちらは1クール(3ヶ月)で終了。桜木さんは、ここで実質的に学生役を卒業し、今度はスーツ姿で「新米刑事」役に挑むことになったのです。いまの時代、「刑事くん」というと、フィギュアスケーターの田中刑事さん(本名!)を思い出す方が多いかもしれませんが、新米刑事の成長を描くドラマのタイトルとして『刑事くん』は秀逸だったと言えるでしょう。前例として、水木しげる先生の『悪魔くん』や藤子不二雄Ⓐ先生の『怪物くん』などもありますが、『刑事くん』の企画者は、その『悪魔くん』を実写化(66~67年)してヒットさせた実績のある、東映の平山亨プロデューサーでした。

 

『刑事くん』での桜木さんの役柄は、三神鉄男。父親も刑事でしたが、ある事件で殉職。鉄男は、この事件の真犯人を自分の手で捕まえるために、刑事になったのです。しかし、現実に刑事という職についたら、当然ながら、特定の事件を自分の都合で捜査するわけにはいきません。猪突猛進の熱血漢にして人情家の鉄男は、それぞれの事件の関係者に感情移入するあまり、日々失敗の連続。それでも、上司の時村は、そんな鉄男を全否定することなく、時に厳しく、時に優しく、見守り続けるのでした。

 

時村を演じるのは、名古屋章さん。企画チーム(東映=平山亨さん&齋藤頼照さん、TBS=橋本洋二さん)をはじめ、初期話数の脚本を手がけた佐々木守さんや、監督の奥中惇夫さん、富田(冨田)義治さん、そして名古屋さんといったメンバーは『柔道一直線』からの続投であり、桜木さんとの相性も抜群でした。ここに、当時はまだ若手だった市川森一さんや長坂秀佳さんといった、後のテレビドラマ界を支えることになる脚本家たちが加わったことで、『刑事くん』は「70年代型」刑事ドラマとでも言うべきスタンスを確立していきます。極めてシンプルに言えば、「犯人」あるいは「事件」が主役になることが多かった60年代までの刑事ドラマに対し、「犯人」あるいは「事件」を追う側の“刑事”が主役になっていったのが「70年代型」刑事ドラマ。主役の刑事が事件もしくは犯人と接して何を感じ、それが彼という人間にどんな影響を与えたか、といった描き方が生まれたのです。もちろん70年代の刑事ドラマすべてがこういったパターンになったわけではなく、あくまで「新たな潮流」ではあるのですが、『刑事くん』と、その翌年にスタートした『太陽にほえろ!』が、一つの流れを決定づけたと言えるでしょう。『刑事くん』の三神鉄男と上司・時村の関係は、そのまま『太陽にほえろ!』におけるマカロニ刑事(萩原健一)やジーパン刑事(松田優作)とボスこと藤堂(石原裕次郎)のそれでした。この構図に先鞭をつけたという点でも『刑事くん』は評価されるべき作品ですが、さらに遡れば、このような関係性の描き方は一連の“スポーツ&根性もの”の流れを汲んでいるわけで、「70年代型」刑事ドラマの誕生は、時代の移り変わりが導いた「必然」だったのかもしれません。

 

新鮮なイメージの刑事ドラマとして早い段階で視聴者を惹きつけることに成功した『刑事くん』ですが、ヒットの要因として、若者に人気のある新鋭スターを次々とゲスト出演させたことも忘れてはならないでしょう。第1シリーズの第12話「もどらない日々」で萩原健一さんが登場し、話題を呼んだことがきっかけとなって、第3クールへと突入した1972年・春期の放送回(第32~35話)では、沢田研二さん、小柳ルミ子さん、南沙織さん、天地真理さんが次々と出演しました。内容面の充実に加え、抜群の宣伝施策も功を奏し、『刑事くん』は高い評価のまま、1年あまりの放送期間を終えます。その最終回となった第57話「人間たちの祭り」では、ついに三神鉄男は父が命を落とした事件の真犯人に辿り着くのですが、現在も東映チャンネルで第1シリーズがリピート放送中ゆえ、具体的な顛末まではここでは触れないことにします。ともあれ、そもそも自分が刑事になった「動機」の部分がなくなった以上、鉄男が刑事を続ける選択肢はありませんでした。さまざまな経験を積んで傷つき、同時に成長した鉄男は刑事を辞め、「人間たち」の中で生きていく決意を固めたのです。

 

こうして『刑事くん』は終了。翌週からは、同じく桜木健一さんの主演による時代劇『熱血猿飛佐助』が放送されました。昭和40年代は、まだ子ども向けの「30分時代劇」というジャンルが残っていた時代。同時期には、『快傑ライオン丸』や『変身忍者嵐』などの特撮ヒーロー時代劇も登場していた中、『熱血猿飛佐助』も健闘し、2クール(半年間)の放送を終えます。そして、その後を受ける形になったのが『刑事くん』第2シリーズでした。当時は『刑事くん』や『熱血猿飛佐助』と並行して、『君たちは魚だ』や『まんまる四角』といった1時間枠のドラマにも出演していた桜木さんでしたが、その中でも、『刑事くん』の三神鉄男は『柔道一直線』の一条直也に続く「当たり役」となったようです。

 

東映チャンネルで6月末よりスタートする『刑事くん』第2シリーズは、1973年4月から放送されました。冒頭で引用した新番組予告からもお分かりのように、その第1話では、当然ながら、三神鉄男の「復職」が描かれます。第1話でしか描かれない、「元・刑事」という状況の鉄男の日常や、彼が復職を決意することになった、ある事件との関わりに注目して、ご覧ください。ゲスト出演の千葉真一さんは当時、5年間にわたってレギュラー出演した『キイハンター』を終えたばかり。そして4月末には大友勝利役で新境地を開拓した『仁義なき戦い 広島死闘篇』の公開を控えており、まさに「ノリにノッている」時期の出演でした。千葉さんは、同じ1973年4月には『ロボット刑事』の第1・2話にもゲスト出演。この時期、“千葉真一”という名前が若い視聴者層にとって、どれだけ効果的だったかを示す事実だと言えるでしょう。一方で、これらの番組に多忙にもかかわらず出演し、後に続く若手たちを積極的に応援した“チバちゃん”のフットワークの軽さ、度量の大きさも記憶したいところです。

 

第2シリーズの新登場キャラクターで注目すべきは、鉄男のライバル的な存在となる同僚刑事・宗方です。演じたのは、当時21歳の三浦友和さん。1972年に『シークレット部隊』で俳優デビューし、『剣道一本!』で早くも初主演を飾っていた二枚目俳優が、本作に新風を吹き込みます。このほか、『サインはV』(69~70年)への出演でブレイクした中山麻理さんも婦人警官・吉本真琴役でレギュラー入り。鉄男、宗方、吉本真琴の3人がドラマの主軸となるフォーマットが確立されました。

 

第2話以降の展開についても少し触れておくと、第3話~第6話が早くも「豪華ゲスト月間」となります。第3話は郷ひろみさん、第4話は森昌子さん、第5話は麻丘めぐみさん。そして第6話には、同時期にNHK大河ドラマ『国盗り物語』(濃姫役)をはじめ、『愛がはじまるとき』『思い橋』といった3本の作品に出演して大ブレイク中だった松坂慶子さんが出演しました。シリーズ再開の初期エピソードだけあって、どの回も充実した内容なので、楽しみにしていただければと思います。そうそう、第4話では森昌子さんの友人役で、放送日の2週間後(1973年5月21日)に歌手デビューを控えていた、後のビッグスターが出演しています。デビュー前ということもあって、画面への登場時間はわずか10秒。決して見逃さないでください。ちなみに、本作では残念ながら、“まだ”三浦友和さんとの共演シーンはありませんでした(と書けば、誰のことだか想像つきますよね?)。

 

なお『刑事くん』はこの後、第3シリーズまで桜木さんが主演し、新たに星正人さんが主演となった第4シリーズまで続きます。こちらの放送は未定ですが、まさに東映の「LEGACY」と言えるシリーズなので、期待したいところです。もちろん『刑事くん』に限らず本文で触れた『太陽の恋人』や『熱血猿飛佐助』の放送も待たれるところ。筆者に同意の方はぜひ、東映チャンネルまで熱いリクエストをお寄せくださいませ!

 

文/伊東叶多

 

<放送日時>

『刑事くん』(第2シリーズ)

6月29日(月)スタート

毎週月曜日18:00~19:00(2話ずつ放送)

再放送:毎週金曜日7:00~8:00

脚本:佐々木守、市川森一、長坂秀佳、小山内美江子ほか

監督:富田義治、竹本弘一、村山新治、小松範任ほか

音楽:菊池俊輔

出演:桜木健一、中山麻理、三浦友和、名古屋章ほか

 

『刑事くん』(第1シリーズ)

毎週木曜日19:00~20:00(2話ずつ放送)

脚本:佐々木守、市川森一、長坂秀佳ほか

監督:奥中惇夫、富田義治、竹本弘一ほか

音楽:菊池俊輔

出演:桜木健一、仲雅美、名古屋章ほか

 

『柔道一直線』

毎週水曜日18:00~19:00(2話ずつ放送)

脚本:佐々木守、上原正三ほか

監督:奥中惇夫、富田義治ほか

音楽:みぞかみひでお

出演:桜木健一、高松英郎ほか

2020年6月12日 | カテゴリー: その他