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チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第36回『黄色いコートの女』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1985年の『火曜サスペンス劇場』作品『黄色いコートの女』をご紹介します。原作としてクレジットされているのは、阿刀田高先生の短編集『街の観覧車』と『だれかに似た人』です。このうち『街の観覧車』は、当コラムの第7回で紹介した『観覧車は見ていた』でも、原作として使用されていました。『観覧車は見ていた』も『黄色いコートの女』も、脚本を高久進さん、監督を鷹森立一さんが務めており、2作の放送日も4ヶ月しか離れていないことから、2作はある意味「姉妹作」と言って良いかもしれません。その『観覧車は見ていた』も今月、放送されますので、ぜひ両作品ともにご覧ください。ちなみに本放送当時、『黄色いコートの女』の前週には、当コラムの第32回で紹介した『断罪』が放送されていました。

 

久保幸恵(中井貴惠)は、画廊も経営する裕福な画家・啓三(前田吟)と出会い、結婚しました。それは幸恵にとって、単なる結婚ではなく、誰にも言えないような苦労の後に、やとのことでつかんだ「幸福」でした。それゆえ幸恵は、この幸せを手放したくないと、強く思っていました。幸い、同居する夫の両親とも、良い関係を築くことができました。夫が、自分をまっすぐに愛してくれていることも感じられました。

そんなある日、幸恵に少しでも楽をさせようという夫の優しさから、久保家に通いの家政婦が雇われました。一橋友子(千石規子)というその女性は、家政婦としては優秀なのでしょうが、何を考えているかわからないところが少々あり、幸恵は苦手でした。

さらに、幸恵にとって、もっと深刻な事態が起こりました。幸恵の「昔の仕事」を知っている男と偶然、再会してしまったのです。その男とは、啓三とは対照的な貧乏画家・笠井三郎(火野正平)。笠井は、幸恵が過去を隠して結婚したことを突き止め、頻繁に接触し、口止め料や、さらに身体まで要求するようになります。脅迫がエスカレートしたため、幸恵は考えに考えた末、自分の過去を啓三に告白することにしました。幸恵の話を聞いた啓三は、烈火のごとく怒りました……。

絶望した幸恵は、やがて自分と同じような、あるいはそれ以上かもしれない絶望を抱えた女性・市村昌代(島かおり)と再会しました。メッキ工場を営んでいた夫の死で、大きな借金を抱え込むことになった昌代。2人の出会いがもたらすものは、果たして……?

 

当時27歳、2年後の1987年には結婚して女優を休業することになる中井貴惠さんが、元・風俗嬢だった主婦という意外な役どころに挑んだ作品です。同時期には、フジテレビの木曜夜10時枠のドラマ『間違いだらけの夫選び』にも出演されていました。

本作は、前半で主人公・久保幸恵をとりまく状況をじっくり描きます。2時間ドラマらしい展開、すなわち「事件」が起こっていくのは後半。それゆえ、印象としてはスローテンポに感じるかもしれませんが、後半の展開は濃密かつ怒濤で、しかも視聴者を良い意味で裏切る工夫もあり、さすが『Gメン’75』の名コンビが脚本、監督を務めた作品だと言えるでしょう。火野正平さん、千石規子さんはまさに「ハマり役」で、ドラマの緊迫感を高めていました。出番は少なめでしたが、暴力団員を演じた石橋雅史さんの凄味も印象的です。

そして、物語に深く関わってくるのが、渡哲也さんが1973年にリリースして大ヒットを記録した曲「くちなしの花」。どのように関わるのかは、実際の作品でご確認ください。

ちなみに2月の『Gメン’75』では、『観覧車は見ていた』『黄色いコートの女』と同じく脚本・高久進さん、監督・鷹森立一さんによる初期の傑作「バスストップ」(第13話)や、深作欣二監督による「Gメン皆殺しの予告」(第16話)、「背番号3長島対Gメン」(第20話)も放送。いよいよ本格的にエンジンがかかり始めた時期の『Gメン’75』にも、ご注目あれ!

それでは、また来月の当コラムでお会いしましょう。

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

 

【違いのわかる傑作サスペンス劇場/2022年2月】

<放送日時>

『黄色いコートの女』

2月11日(金)11:00~13:00

2月25日(金)11:00~13:00

 

『観覧車は見ていた』(出演:市毛良枝/丹波哲郎)

2月4日(金)11:00~13:00

2月15日(火)21:30~23:30

 

『授業参観の女』(出演:緒形拳/萬田久子)

2月2日(水)22:00~24:00

2月18日(木)11:00~13:00

2022年2月2日 | カテゴリー: その他