その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第15回 『華やかな死体』

不安な日々が続く中、みなさまはいかがお過ごしでしょうか……。

かつて、「♪なんでもないようなことが~」というフレーズが印象的なヒット曲がありましたが、まさに「当たり前」のことを普通にやれていた日常が懐かしくなっている今日この頃。人類が長いトンネルを抜けるのがいつの日になるのか分かりませんが、そう遠くない将来、また「当たり前」の日々を取り戻せることを祈りつつ――。

今月、ご紹介するのは1980年の「土曜ワイド劇場」作品より、9月の「競作推理シリーズ」第2弾として放送された『華やかな死体 赤い花は殺人予告』です。原作は、佐賀潜先生による第8回江戸川乱歩賞受賞作(戸川昌子先生が同時受賞)。作品が発表されたのは、1962年でした。佐賀先生ご自身は、検事、弁護士を経て作家となった人物。1970年に56歳の若さで逝去されたため、若い世代にはなじみのない存在かもしれません。筆者個人で言うと、「必殺」シリーズの『助け人走る』(73年)で、原案として「清兵衛流極意~明治泥棒物語~」という作品がクレジットされているのですが、その著者が佐賀先生で、佐賀潜=「さがせん」という名前(ペンネーム)が印象に残っていた程度でした。とはいえ、60年代は小説のみならず法律入門書の類でもヒットを連発。もし70年代以降もご存命で、活躍を続けていれば……と悔やまれます。監督は、大映京都を経て、70年代以降はテレビドラマを中心に活躍している池広一夫さん。1990年にスタートした「土曜ワイド劇場」の『終着駅シリーズ』は、「土ワイ」が2017年に終了してからも継続しており、本年=2020年1月に放送された最新作(シリーズ第36作)も、池広監督が手がけました。昨年=2019年で90歳ということに驚かされます。なお、脚本の石松愛弘さんは、池広監督の義弟にあたります。

 

ある夜、食品会社「三協食品」の社長を務める柿本高信(相原巨典)が自宅で何者かに殺害され、連絡を受けた埼玉地検の検事・城戸明(竹脇無我)が現場へと急行しました。第一発見者は、柿本の息子である富美夫(織田あきら)。凶器は現場にあった青銅の花瓶と思われ、犯人のものらしき指紋も残されていたことから、事件は遠からず解決するだろうというのが、捜査関係者の見込みでした。

やがて、埼玉県警・浦川署の津田刑事(織本順吉)の丹念な捜査もあって、かつて柿本の秘書を務めていたが、柿本の妻・みゆき(赤座美代子)と不倫関係になったことがバレて秘書をクビになり、現在は金融会社「深町商事」の営業部長となっている人見十郎(長谷川明夫)が有力容疑者として浮かび上がりました。津田刑事は指紋のみならず、毛髪などの証拠も慎重に押さえて、ついに人見は逮捕されました。

捜査の手続きなども問題なく、これで一件落着と思われました。担当検事の城戸は上司(内藤武敏)から、近いうちに栄転の話があると聞かされていたこともあり、より一層、この事件に力を入れて取り組んでいました。

ところが……人見の弁護人として、有名な大物弁護士・山室竜平(佐藤慶)がやって来たことから、風向きが変わり始めます。山室に依頼したのは、人見が働いていた深町商事の社長・深町源造(金子信雄)でした。山室クラスの弁護士が動き出したこと自体、埼玉地検側にとっては不可解でしたが、依頼主が深町だというのも謎でした。いったい。この事件を担当することで深町や山室に何のメリットがあるのか!?

そして、浦川地裁で始まった裁判では、事件関係者が次々と、取り調べ段階での証言を翻していきます。さらに、人見にとって有利な証言も次々と出てきました。料亭の女将・峯島たつ(弓恵子)や、花屋の女主人(吉野佳子)によるアリバイ証言などは、もはや決定的でした。どう考えても、犯人は人見に間違いないはずなのに……。

公判が重ねられた末、裁判長が述べた判決は、城戸たちにとって無情とも言えるものでした。

 

……と、ここまでストーリーを書いても、ここから先もきっと、面白く観られるはず。それだけしっかりした構成で、さすが法廷経験が豊富な佐賀先生の作品、という印象です。ただし、2時間ドラマとしての映像化にあたり、細部はかなり変更されている模様。原作では容疑者を絞るまでのプロセスにも紙数が割かれていますが、ドラマ版では、城戸VS山室の法廷勝負を際立たせるため、全体のバランスに手が加えられています。この改変は、成功していたと言えるでしょう。また、細かい点では、主人公・城戸のイメージも原作とドラマでは少々、異なっています。ドラマ版の城戸は演じるのが竹脇無我さんということもあり、最初から「頼れる」印象が強いのですが、そのことが逆に、後半で逆襲されていくくだりを印象づけているとも言えるので、この点も、巧い改変だったのではないでしょうか。

唯一、ラストについては、2時間ドラマというジャンルの「限界」を示しており、不満が残る視聴者も多いかもしれませんが、原作とはまた違った余韻が残るので、これはこれで「アリ」と言っておきたいです。正直なところ、あと10~15分くらい尺が欲しかったところですが……。

本作のキャストは、渋い実力派揃い。とりわけ、大物弁護士に佐藤慶さん、サラ金会社の胡散臭い社長に金子信雄さん、といったあたりは絶品です。こんな曲者が手を組んだら、正統派の二枚目にして美声の持ち主・竹脇無我さんもタジタジでしょう。

マニアックなポイントとしては、裁判での峯島たつの証言内容にご注目ください。ちょっと唐突な証言なので、思わず笑ってしまう方もいらっしゃるかも?

 

それでは、また次回へ。なお、5月の「違いのわかるサスペンス劇場」では本作のほか、1986年の『山村美紗サスペンス』より『死人が夜ピアノを弾く』(脚本・監督:中島貞夫/出演:松方弘樹、松尾嘉代、宅麻伸、西田健ほか)、1992年の『不思議サスペンス』より『姿のない尋ね人』(監督:崔洋一/出演:古尾谷雅人、黒田福美、内藤剛志ほか)も放送されます。これらの作品群もぜひ、ご堪能ください!

文/伊東叶多

 

<放送日時>

『華やかな死体』

5月2日(土)13:00~15:00

5月16日(土)13:00~15:00

5月30日(土)13:00~15:00

 

『死人が夜ピアノを弾く』

5月9日(土)13:00~14:30

5月23日(土)14:00~15:30

 

『姿のない尋ね人』

5月9日(土)14:30~15:30

5月23日(土)13:00~14:00

2020年4月14日 | カテゴリー: その他
かめぽん

チューもく!! 男の色気を漂わす、危ないおじさま 津川雅彦

新型コロナウィルスの影響で世界的に外出もままならない昨今。せめて、家の中でスカッとする、気持ちが上がる作品をご覧いただけたら。見えない敵と対峙する不安、仕事や買い物で外出するときに常に感じます。どうか、手洗いを徹底し、おうちにいるときくらい、ホッとなごんで、緊張したこころを解してください。

さて、津川雅彦さん。かめぽんの叔母がファンで、マルベル堂のブロマイドが家にあったっけ。若くてギラギラした感じの濃い顔の方だなと、若きかめぽんはそのブロマイドを見て思ったっけ。
匂い立つ色気…男性にそう感じる方は少ないのだけど、津川さんにはそんな香りがする。今月の特集「愛とエロス 渡辺淳一の世界」で放映する4作品中3作品に出ていらっしゃる。
今時こんな男性は非難の的になるであろう、奔放な恋愛観を持つ男、それを津川さんが演じるとどこか憎めないのが不思議だ。かめぽん個人的にはお年を召した津川さんの方が好きで、相棒の瀬戸内米蔵役が印象に残る。カメラやゴジラ、ウルトラマンまで特撮にも意外とたくさん出演されていた。
ちなみに、お兄様の長門裕之さんは今月放映の「スケバン刑事」シリーズに出ていらっしゃるので併せてご覧いただきたい。

202004

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
今月も「麻雀放浪記スペシャル」や「追悼特別企画 俳優・梅宮辰夫 Vol.2」の他、ドラゴンボール世代からは外れているかめぽんにはぴったりの「Dr.スランプ アラレちゃん 映画版スペシャル」(空豆クリキントンが大好きだ)。「仮面ライダー スペシャル」は松平健さんの将軍さまも出演の「劇場版 仮面ライダーオーズ WONDERFUL 将軍と21のコアメダル ディレクターズカット版」も放映されるのでお子様とおじいちゃんおばあちゃんも一緒に楽しめるぞ。もちろん、いつものように時代劇から任侠映画、アニメ特撮まで幅広くラインナップ。
いろいろ不安や我慢が続く今、映像の中ではのびのびと楽しんでいただきたい。

今月もわくわくな東映チャンネルをお見逃しなく〜

2020年4月1日 | カテゴリー: かめぽん
その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第14回『不安な階段』

春・4月。本来なら、新年度の明るいムードに包まれた季節なのですが、今年ばかりはそうもいかず、悶々とした毎日を過ごしている方も多いと存じます。そんなときこそ東映チャンネル……と言うと不謹慎かもしれませんが、新旧さまざまな東映作品をご覧いただき、しばしフィクションの世界へ旅していただければと思っています。

さて今月は、いよいよ一連の『傑作推理劇場』シリーズでは最後の放送作品となる、『不安な階段』をご紹介します。本作が放送されたのは、1982年4月15日。『春の傑作推理劇場』全体としても、本作が最終回でした。当時と同じく、今回は4月の放送ということで、それを念頭に置いてご視聴いただくのも一興でしょう。原作は夏樹静子先生の『階段』。監督は『不良番長』シリーズ(68~72年)などを経て70年代後半からは本格的に活躍の場をテレビへと移行し、当時は『特捜最前線』(77~87年)のローテーションの一翼を担っていた野田幸男さんでした。82年1月~3月期だけでも『特捜』を4話分、手がけています。

 

ブティックを経営している36歳の美しき未亡人・芳村杏子(浜木綿子)には、小学6年生になる長女・ユキコ(仙道敦子)がいました。仕事が忙しいため、家事はお手伝いの郷田君枝(乙羽信子)がこなしていました。杏子と同じく夫を亡くしている君枝はとてもおしゃべりな性格で、何かと言えば亡き夫の自慢話をするのですが、杏子とはウマが合っているようで、芳村家は一見、幸せな様子でした。

しかし、まだじゅうぶんに若い杏子は、新しい恋をしていました。相手は、ブティックの経理関係を任せている北島哲夫(荻島真一)。ある夜、哲夫は杏子を家まで送り届けると、そのまま杏子の家で仕事の続きをやりたいと言い出しました。杏子は複雑な年頃のユキコのことを慮り、哲夫を帰そうとしますが、彼は動こうとしません。結局、ユキコを寝かしつけた後、哲夫と杏子は情事に及びます。翌朝、杏子が部屋を出ると、部屋の前には、ユキコのヘアピンが落ちていました。ユキコに自分たちのことを知られたのかもしれないと、動揺する杏子。しかし哲夫のほうは平然としていました。

間もなく、杏子は店へと出勤。ユキコも小学校へと登校しますが、哲夫はそのまま、家に残って仕事を続けました。その日の午後、杏子は警察から電話を受けて驚きます。なんと、哲夫が芳村家の階段から転落し、死亡したというのです。杏子は、母親であるにもかかわらず、咄嗟にユキコのことを疑ってしまいました。哲夫が死亡したと思われる時刻、ユキコはすでに下校し、家に帰っていた可能性があるのです……。

 

というわけで、物語の焦点は「哲夫の死は事故なのか、あるいは他殺なのか」に絞られていきます。そして他殺だとした場合、犯人は誰なのか? 動機がありそうなのはユキコですが、そう思っているのは母の杏子だけですし、それどころか、その動機が間違いなければ、自分にも大きな責任があることになり……。母親であるとともにひとりの女性でもある杏子の複雑な心情を、浜木綿子さんが見事に表現されていました。

そして、本作のもうひとりの主人公といえるユキコを演じたのが子役時代の仙道敦子さんです。整った顔立ちには、すでに現在(50歳!)の仙道さんの面影が、はっきりとあります。撮影当時、仙道さんは実際に小学6年生でしたが、年齢よりも少し大人っぽい雰囲気を醸し出しており、今回の役柄にはピッタリなイメージだったと思います。本作の前年、テレビ朝日の『判決-生きる』(81年)にレギュラー出演した仙道さんは、その演技力を認められ、1982年には『鬼龍院花子の生涯』(6月公開)、『大日本帝国』(8月公開)という東映の大作2本に立て続けに出演。まさに、ブレイク前夜でした。結婚後、90年代の中盤からは芸能活動をほぼ休止されていましたが、2018年に本格復帰。NHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』(19年)への出演は、記憶に新しいところでしょう。

キャストでもうひとり、触れておきたいのが君枝役の乙羽信子さんです。君枝がお手伝いとして働いている芳村家で発生した事件(事故?)なので、当然ながら、君枝もキーパーソンのひとりです。彼女が事件について何を知っているのか……は本編をご覧いただくとして、当時の乙羽さんといえば、星野知子さん主演でスペシャルドラマが計8作にわたって放送された『サザエさん』(81~85年)で、フネ役を演じていました。そして、驚異的な視聴率を獲得したNHK朝の連続テレビ小説『おしん』(83年)では、主人公・おしんの中年~老年期を担当。還暦を前に、女優としてノリにノッていた時期と言えるでしょう。

タイトルの『不安な階段』とはもちろん、哲夫が死亡する原因となった、芳村家の階段のこと。この階段、もともと手すりがなく、見るからに危険な作りになっていますが、なぜそんな階段なのかは、劇中で説明が加えられています。とはいえ、それにしても、もっと早く(ユキコが幼いうちに)手すりをつけておくべきだったのではないかと思ってしまいますが、そういうツッコミは野暮というものでしょう。なお、この点が気にかかる方はきっと、結末についても若干「?」となりそうですが……。

また杏子が経営するブティックとして撮影に使用されているのは、クレジットによれば「ミレーヌ友田」の直営店舗のようです。「ミレーヌ友田」は70年代に創業し、80年代にパーティードレスやフォーマルドレスの分野で一時代を築いたブランドでした。

 

それでは、また次回へ。なお、4月の「違いのわかるサスペンス劇場」では本作のほか、1980年の『土曜ワイド劇場』より『京舞妓殺人事件』(監督:牧口雄二/脚本:大和屋竺/出演:長門裕之ほか/東映チャンネル初放送)、1993年の『サスペンス・明日の13章』より『変身 もう一人の私』(監督:黒沢直輔/脚本:信本敬子/出演:伊藤かずえ、蟹江敬三、石濱朗ほか)、1988年の『京都サスペンス』より『マルゴォの杯』(監督:山下耕作/脚本:橋本綾/出演:岩下志麻、奈良岡朋子、石橋蓮司ほか)も放送されます。これらの作品群もぜひ、ご堪能ください!

 

文/伊東叶多

 

<放送日時>

『不安な階段』

4月4日(土)13:00~14:00

4月11日(土)14:00~14:50

4月19日(日)15:00~16:00

 

『京舞妓殺人事件』

4月4日(土)14:00~15:50

4月18日(土)14:00~15:50

4月25日(土)13:00~15:00

 

『変身 もう一人の私』

4月5日(日)15:00~16:00

4月18日(土)13:00~14:00

 

『マルゴォの杯』

4月11日(土)13:00~14:00

4月25日(土)15:00~16:00

2020年3月17日 | カテゴリー: その他
かめぽん

チューもく!! 日活出身なのに時代劇スター。いまも顔力凄いです。 高橋英樹

先月は我がアイドル秀樹を取り上げ、今月は時代劇の英樹。どんだけHIDEKIが好きなんだなかめぽんです。

2月から放映されております池波正太郎先生原作の「編笠十兵衛」。原作もドラマも大好きな作品。若くて美しい英樹さまが主人公の月森十兵衛、その上司の中根正冬を片岡知恵蔵さんが演じた。二人の濃い顔対決も見所だが、本作は脇を固める役者さんがこれまたかめぽん好み。十兵衛を執拗に追いかける男、舟津弥九郎役は成田三樹夫さん。奥田孫太夫の大友柳太朗さんや俵星玄蕃の長門勇さん、小林平八の露口茂さん、柳沢吉保の岡田英次さんもツボ。吉良上野介は伊藤雄之助さんだし、忠臣蔵に絡めての幕府の思惑、世論の動向など、もしかしてこんなことがあったかも…と思うようなリアルなストリーが楽しめる。
女優陣も十兵衛の妻静江役の藤浩子さんや、瑤泉院の宮園純子さん、十兵衛の密偵千弥役の中島ゆたかさんの静かな中に燃える情念がたまらない。千弥は原作でも好きな役なので、ぜひ注目していただきたい。
忠臣蔵大好きかめぽんオススメの1作。

202003

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いま、世の中は新型肺炎の影響で様々なイベントが中止され、景気も気分も停滞している。そんなときに少しでも気分をあげる作品を、おうちで観るのはいかがだろう。TVの前でひととき、非現実な世界に没頭していただきたい。
「人生が豊かになる食の映画特集」は観ているだけでお腹が空く作品2本を放映。
子供たちには「映画プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日』公開記念【プリキュア映画カーニバル!2020春」や「仮面ライダービルド スペシャル」を。
スカッとする時代劇の「オールスター清水の次郎長スペシャル」や「一挙放送!侠道」もオススメ。
おうちで家族揃って過ごす、そんな春。
手洗いを十分して、よく寝て、よく食べて。
素敵な作品をたくさん観て、たくさん笑って、泣いて。
SARSにMERS、新型インフル等、いままでも人々の英知で乗り越えてきました。
コロナウィルスも克服できると信じてます。
みなさま、くれぐれもご自愛ください。

今月もわくわくな東映チャンネルをお見逃しなく〜

2020年3月2日 | カテゴリー: かめぽん
その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY                第13回『ステレオ殺人事件』

おかげさまで、今回より「東映テレビドラマLEGACY」も2年目に入りました。相変わらず、細々と、ではありますが、好きな「東映テレビドラマ」について語れる喜びを噛みしめつつ、執筆を続けております。今月は1982年の『春の傑作推理劇場』より、『ステレオ殺人事件』をご紹介します。

『春の傑作推理劇場』は、1980年と1981年の夏期に集中放送された『傑作推理劇場』の好評を受け、1982年の1月末から4月中旬にかけて、テレビ朝日の毎週木曜夜9時枠で放送されました。この枠はテレビ朝日を代表するドラマ枠のひとつで、1985年の秋からは、水曜夜10時から移動してきた『特捜最前線』を放送。90年代には『七人の女弁護士』シリーズや、『法医学教室の事件ファイル』シリーズなどが人気を博しました。そして近年ではなんといっても『ドクターX~外科医・大門未知子~』シリーズが印象的です。

『春の傑作推理劇場』全10エピソードの中で、東映が製作を手がけたのは『ラスト・チャンス』(2月に放送済み)、『ステレオ殺人事件』、『妻よ安らかに眠れ』、『不安な階段』の4本。このほか、松竹作品『黒い館の女』『嫉妬』はいずれも、松坂慶子さんが主演でした。特に『嫉妬』は前・後編という破格の待遇。『黒い館の女』は深作欣二監督、『嫉妬』前・後編は降旗康男監督と、スタッフ陣の豪華さも目を引きます。

『ステレオ殺人事件』はシリーズの中で3話目として、1982年2月11日に放送されました。脚本は、東映京都撮影所の助監督を経て、シナリオライターとなった掛札昌裕さん。東映ファンは、石井輝男監督や鈴木則文監督の諸作の脚本家として、よくご存知でしょう。監督は小山幹夫さん。60年代後半から平成初期まで、さまざまなジャンルのテレビドラマを手がけられました。代表作には『プレイガール』(69~74年)や、土曜ワイド劇場『三毛猫ホームズ』シリーズ(79~84年/2作目から最終作までを担当)、『HOTEL』シリーズ(90~98年/95年の第4シーズンまでを担当)などがあります。

さて、この『ステレオ殺人事件』ですが、原作は森村誠一先生の短編で、1972年発行の『殺意の逆流』を皮切りに、他のさまざまな短編集にも収められています。タイトルから連想するのは、いわゆる「騒音殺人」の類ではないでしょうか。しかし、その種の事件の最初の例として知られる「ピアノ騒音殺人事件」が発生したのは、1974年のことでした(この事件で死刑判決を宣告された人物は2019年現在、90歳を超えていますが、未だ死刑は執行されていないそうです)。ピアノ事件の後、1976年や1981年には、まさにステレオの音量が原因となった殺人事件が発生していますが、いずれにせよ、『ステレオ殺人事件』が書かれたのは、それらの事件よりも前だったことになります。

それゆえ、というのも妙な表現ですが、『ステレオ殺人事件』で起こる“殺人”の直接の動機は「騒音」ではありませんでした。なので、「騒音の話かな?」と思って本作を観ると展開に驚かれるかもしれません。

 

郊外の新興団地で、会社員の夫・勇次(山本紀彦)とともに暮らす主婦・吉崎勢津子(秋吉久美子)は、隣に住む片野家から聞こえてくる大音量の音楽に悩まされていました。昼間は趣味の鎌倉彫りに没頭したいのに、とてもそれどころではありません。勢津子はもう、何度も片野家のドアを叩き、夫人の郁子(結城しのぶ)に対して直接、苦情を言っていましたが、郁子は「自分の好きな音楽をかけて何がいけないの?」と、悪びれる様子すらありませんでした。音楽がかかるのは、必ず日中だけだったため、帰宅した勇次にそのことを話しても「ステレオくらい我慢しろ」と、つれない返事。勢津子は「引っ越したい」とまで考えるようになっていたのですが、それを言い出すと勇次は分かりやすく不機嫌になるのでした。たまらず近所の交番で、巡査(河合絃司)に訴えてみた勢津子でしたが、やはり、真剣に受け止めてもらうことはできず……。勢津子はもはやノイローゼ寸前まで追い込まれていました。

そんな勢津子に魔が差したのか、彼女はある日、万引きをしてしまいます。店を出たところで、警備員(丸岡奨詞)に呼び止められ、店へ連れ戻される勢津子。当然ながら、警察へ通報されるところでしたが、もうひとりの警備員・戸室(峰岸徹)が、たまたま同じ団地で暮らしていて顔見知りだったため、彼女の罪は今回に限り、不問ということになりました。勢津子は、戸室に深く感謝します。

しかし、彼女を悩ませる騒音が止むことはありませんでした。このままでは、勢津子の精神が崩壊するのは時間の問題です。でもそんなとき、あるきっかけから、勢津子は郁子の秘密を握ることに成功しました。そう、郁子が日中、ステレオを使うことには、ある理由があったのです。そこから勢津子の「逆襲」が始まりましたが、その「逆襲」は、やがて予想もつかない事態へと発展していき……。

 

先月、ご紹介した『死ぬより辛い』も、主演の秋野暢子さんの鬼気迫る演技が見どころでしたが、この『ステレオ殺人事件』も、秋吉久美子さんがさまざまな表情を見せてくれています。極度のストレスから万引きへと至ってしまう際の虚ろな表情、そして「逆襲」に転じたときの表情などは、特にポイントだと言えるでしょう。

劇中、何度もステレオから流れる曲は、スウェーデンのポップ・グループで、世界的な人気を博したABBAの『On And On And On』(劇中の台詞では『On And On』)。エンディングでもこの曲を使っているのが、なかなか面白い演出でした。ちなみに原作では、フランスのムードオーケストラ音楽ということになっていますが、原作の発表から約10年が経過していることや、テレビドラマとしての表現を考えると、この改変はうまくハマっていたと言えるでしょう。

やがて発生する「ステレオ殺人事件」。明確な「動機」が存在することから、容疑者となってしまう勢津子。真犯人は誰なのか、そして事件が起こるに至った背景とは? よく練られた設定と構成で、最後まで目が離せない作品となっています。一つだけ付け加えると、キャストに叶和貴子さんの名前がありますが、ストーリー紹介のところには出てきていません。1982年の叶さんといえば、お正月に放送された土曜ワイド劇場『江戸川乱歩の美女シリーズ 天国と地獄の美女』でヒロインを演じ、3月からは『宇宙刑事ギャバン』にレギュラー出演と、まさにブレイク真っ只中。そんな時期(2月)の放送とは思えないほど、意外なタイミングで、意外な役柄を演じているので、ぜひご注目ください。他にも北村総一朗さん、横山道代さん、三谷昇さんと、個性派のキャスト陣が顔を揃えています。

 

それでは、また次回へ。なお、3月の「違いのわかるサスペンス劇場」では本作のほか、同じく1982年の『春の傑作推理劇場』より『妻よ安らかに眠れ』(出演:愛川欽也、畑中葉子ほか/東映チャンネル初放送)、1993年の『サスペンス・明日の13章』より『小さな王国』(監督:吉川一義/出演:岩下志麻、草刈正雄、石立鉄男ほか)、1988年の『乱歩賞作家サスペンス』より『罠の中の七面鳥』(監督:崔洋一/出演:浅野ゆう子、古尾谷雅人、室井滋、相楽晴子ほか)も放送されます。これらの作品群もぜひ、ご堪能ください!

文/伊東叶多

 

<放送日時>

『ステレオ殺人事件』

3月7日(土)13:00~14:00

3月11日(水)13:00~14:00

3月14日(土)14:00~15:00

3月28日(土)14:00~14:50

 

『妻よ安らかに眠れ』

3月11日(水)14:00~15:00

3月16日(月)13:00~14:00

3月21日(土)14:00~15:00

3月28日(土)13:00~14:00

 

『小さな王国』

3月7日(土)14:00~15:00

3月14日(土)13:00~14:00

 

『罠の中の七面鳥』

3月16日(月)14:00~15:00

3月21日(土)13:00~14:00

2020年2月25日 | カテゴリー: その他
かめぽん

チューもく!! 永遠のアイドル、青い空が飛び切り似合ったスーパースター 西城秀樹

ちびまる子ちゃんのお姉ちゃんと同世代のかめぽん。ええ、御三家世代です。かめぽんはまるちゃんのお姉ちゃんと同じく、秀樹派。ヒデキ、感激ーを密かにつぶやく秀樹大好き少女でした。

西城秀樹さんが亡くなってはや2年になろうとしている。音楽関係のライターの友人が、亡くなってから秀樹の歌のすばらしさを実感したとしみじみ言っていた。歌唱力もそうなのだが、彼の声がとてもいいのだ。情熱の嵐、ヤングマン、ちぎれた愛、薔薇の鎖、傷だらけのローラ、ギャランドゥそしてブルースカイブルー。秀樹の歌はたくさん、たくさん覚えている。熱心なファンじゃなかったけど、秀樹はわたしの子供の頃のアイドルナンバー1。だから、その人が突然亡くなってしまい、ショックだった。マイケル・ジャクソンが亡くなったときよりも、秀樹の死が衝撃だった。闘病生活でご苦労されていた姿も目に焼き付いている。それでも、秀樹がステージに立っていたので、安心していた。いつか、秀樹のステージを見に行こうと連れ合いと話してもいた。後悔先に立たず、逢いたい人には逢いに行き、観たいものは観ておいた方がよいと思う今日この頃。一期一会という言葉を心に刻もうと思う(今更だけど…)
今月、東映チャンネルで放映される「ザ・ヒットマン 血はバラの匂い」は芸能生活20周年を記念した作品。アイドル時代よりも一層渋くなった大人の秀樹に出会えるぞ。アクションも色っぽいシーンも満載。

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今月の特集のトップは「GReeeeN」映画プロジェクト スペシャル。話題の(というか、注目の)横浜流星さん、清原果耶さんの共演作「愛唄 -約束のナクヒト-」をTV初放映。「愛唄 -約束のナクヒト-」にも流星さん出てますよ。
「デジモンアドベンチャー THE MOVIE!」は会社の後輩にお勧めしなきゃ。デジモン大好きな方には、新作映画公開前に気持ちが盛り上がる特集。デジモン知らない方も、映画版を一挙放映なので、デジモンワールドを味わえる。
かめぽん個人的には「新幹線大爆破 4Kリマスター版」と「長靴をはいた猫」の4Kリマスター版2本は録画案件。
アニメ、特撮、時代劇、任侠映画まで幅広いラインナップで、今月もわくわくしていただきたい。

遅ればせながら、オリンピックイヤーの2020年も東映チャンネルをよろしくお願いいたします。

2020年2月1日 | カテゴリー: かめぽん