その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY                第13回『ステレオ殺人事件』

おかげさまで、今回より「東映テレビドラマLEGACY」も2年目に入りました。相変わらず、細々と、ではありますが、好きな「東映テレビドラマ」について語れる喜びを噛みしめつつ、執筆を続けております。今月は1982年の『春の傑作推理劇場』より、『ステレオ殺人事件』をご紹介します。

『春の傑作推理劇場』は、1980年と1981年の夏期に集中放送された『傑作推理劇場』の好評を受け、1982年の1月末から4月中旬にかけて、テレビ朝日の毎週木曜夜9時枠で放送されました。この枠はテレビ朝日を代表するドラマ枠のひとつで、1985年の秋からは、水曜夜10時から移動してきた『特捜最前線』を放送。90年代には『七人の女弁護士』シリーズや、『法医学教室の事件ファイル』シリーズなどが人気を博しました。そして近年ではなんといっても『ドクターX~外科医・大門未知子~』シリーズが印象的です。

『春の傑作推理劇場』全10エピソードの中で、東映が製作を手がけたのは『ラスト・チャンス』(2月に放送済み)、『ステレオ殺人事件』、『妻よ安らかに眠れ』、『不安な階段』の4本。このほか、松竹作品『黒い館の女』『嫉妬』はいずれも、松坂慶子さんが主演でした。特に『嫉妬』は前・後編という破格の待遇。『黒い館の女』は深作欣二監督、『嫉妬』前・後編は降旗康男監督と、スタッフ陣の豪華さも目を引きます。

『ステレオ殺人事件』はシリーズの中で3話目として、1982年2月11日に放送されました。脚本は、東映京都撮影所の助監督を経て、シナリオライターとなった掛札昌裕さん。東映ファンは、石井輝男監督や鈴木則文監督の諸作の脚本家として、よくご存知でしょう。監督は小山幹夫さん。60年代後半から平成初期まで、さまざまなジャンルのテレビドラマを手がけられました。代表作には『プレイガール』(69~74年)や、土曜ワイド劇場『三毛猫ホームズ』シリーズ(79~84年/2作目から最終作までを担当)、『HOTEL』シリーズ(90~98年/95年の第4シーズンまでを担当)などがあります。

さて、この『ステレオ殺人事件』ですが、原作は森村誠一先生の短編で、1972年発行の『殺意の逆流』を皮切りに、他のさまざまな短編集にも収められています。タイトルから連想するのは、いわゆる「騒音殺人」の類ではないでしょうか。しかし、その種の事件の最初の例として知られる「ピアノ騒音殺人事件」が発生したのは、1974年のことでした(この事件で死刑判決を宣告された人物は2019年現在、90歳を超えていますが、未だ死刑は執行されていないそうです)。ピアノ事件の後、1976年や1981年には、まさにステレオの音量が原因となった殺人事件が発生していますが、いずれにせよ、『ステレオ殺人事件』が書かれたのは、それらの事件よりも前だったことになります。

それゆえ、というのも妙な表現ですが、『ステレオ殺人事件』で起こる“殺人”の直接の動機は「騒音」ではありませんでした。なので、「騒音の話かな?」と思って本作を観ると展開に驚かれるかもしれません。

 

郊外の新興団地で、会社員の夫・勇次(山本紀彦)とともに暮らす主婦・吉崎勢津子(秋吉久美子)は、隣に住む片野家から聞こえてくる大音量の音楽に悩まされていました。昼間は趣味の鎌倉彫りに没頭したいのに、とてもそれどころではありません。勢津子はもう、何度も片野家のドアを叩き、夫人の郁子(結城しのぶ)に対して直接、苦情を言っていましたが、郁子は「自分の好きな音楽をかけて何がいけないの?」と、悪びれる様子すらありませんでした。音楽がかかるのは、必ず日中だけだったため、帰宅した勇次にそのことを話しても「ステレオくらい我慢しろ」と、つれない返事。勢津子は「引っ越したい」とまで考えるようになっていたのですが、それを言い出すと勇次は分かりやすく不機嫌になるのでした。たまらず近所の交番で、巡査(河合絃司)に訴えてみた勢津子でしたが、やはり、真剣に受け止めてもらうことはできず……。勢津子はもはやノイローゼ寸前まで追い込まれていました。

そんな勢津子に魔が差したのか、彼女はある日、万引きをしてしまいます。店を出たところで、警備員(丸岡奨詞)に呼び止められ、店へ連れ戻される勢津子。当然ながら、警察へ通報されるところでしたが、もうひとりの警備員・戸室(峰岸徹)が、たまたま同じ団地で暮らしていて顔見知りだったため、彼女の罪は今回に限り、不問ということになりました。勢津子は、戸室に深く感謝します。

しかし、彼女を悩ませる騒音が止むことはありませんでした。このままでは、勢津子の精神が崩壊するのは時間の問題です。でもそんなとき、あるきっかけから、勢津子は郁子の秘密を握ることに成功しました。そう、郁子が日中、ステレオを使うことには、ある理由があったのです。そこから勢津子の「逆襲」が始まりましたが、その「逆襲」は、やがて予想もつかない事態へと発展していき……。

 

先月、ご紹介した『死ぬより辛い』も、主演の秋野暢子さんの鬼気迫る演技が見どころでしたが、この『ステレオ殺人事件』も、秋吉久美子さんがさまざまな表情を見せてくれています。極度のストレスから万引きへと至ってしまう際の虚ろな表情、そして「逆襲」に転じたときの表情などは、特にポイントだと言えるでしょう。

劇中、何度もステレオから流れる曲は、スウェーデンのポップ・グループで、世界的な人気を博したABBAの『On And On And On』(劇中の台詞では『On And On』)。エンディングでもこの曲を使っているのが、なかなか面白い演出でした。ちなみに原作では、フランスのムードオーケストラ音楽ということになっていますが、原作の発表から約10年が経過していることや、テレビドラマとしての表現を考えると、この改変はうまくハマっていたと言えるでしょう。

やがて発生する「ステレオ殺人事件」。明確な「動機」が存在することから、容疑者となってしまう勢津子。真犯人は誰なのか、そして事件が起こるに至った背景とは? よく練られた設定と構成で、最後まで目が離せない作品となっています。一つだけ付け加えると、キャストに叶和貴子さんの名前がありますが、ストーリー紹介のところには出てきていません。1982年の叶さんといえば、お正月に放送された土曜ワイド劇場『江戸川乱歩の美女シリーズ 天国と地獄の美女』でヒロインを演じ、3月からは『宇宙刑事ギャバン』にレギュラー出演と、まさにブレイク真っ只中。そんな時期(2月)の放送とは思えないほど、意外なタイミングで、意外な役柄を演じているので、ぜひご注目ください。他にも北村総一朗さん、横山道代さん、三谷昇さんと、個性派のキャスト陣が顔を揃えています。

 

それでは、また次回へ。なお、3月の「違いのわかるサスペンス劇場」では本作のほか、同じく1982年の『春の傑作推理劇場』より『妻よ安らかに眠れ』(出演:愛川欽也、畑中葉子ほか/東映チャンネル初放送)、1993年の『サスペンス・明日の13章』より『小さな王国』(監督:吉川一義/出演:岩下志麻、草刈正雄、石立鉄男ほか)、1988年の『乱歩賞作家サスペンス』より『罠の中の七面鳥』(監督:崔洋一/出演:浅野ゆう子、古尾谷雅人、室井滋、相楽晴子ほか)も放送されます。これらの作品群もぜひ、ご堪能ください!

文/伊東叶多

 

<放送日時>

『ステレオ殺人事件』

3月7日(土)13:00~14:00

3月11日(水)13:00~14:00

3月14日(土)14:00~15:00

3月28日(土)14:00~14:50

 

『妻よ安らかに眠れ』

3月11日(水)14:00~15:00

3月16日(月)13:00~14:00

3月21日(土)14:00~15:00

3月28日(土)13:00~14:00

 

『小さな王国』

3月7日(土)14:00~15:00

3月14日(土)13:00~14:00

 

『罠の中の七面鳥』

3月16日(月)14:00~15:00

3月21日(土)13:00~14:00

2020年2月25日 | カテゴリー: その他
かめぽん

チューもく!! 永遠のアイドル、青い空が飛び切り似合ったスーパースター 西城秀樹

ちびまる子ちゃんのお姉ちゃんと同世代のかめぽん。ええ、御三家世代です。かめぽんはまるちゃんのお姉ちゃんと同じく、秀樹派。ヒデキ、感激ーを密かにつぶやく秀樹大好き少女でした。

西城秀樹さんが亡くなってはや2年になろうとしている。音楽関係のライターの友人が、亡くなってから秀樹の歌のすばらしさを実感したとしみじみ言っていた。歌唱力もそうなのだが、彼の声がとてもいいのだ。情熱の嵐、ヤングマン、ちぎれた愛、薔薇の鎖、傷だらけのローラ、ギャランドゥそしてブルースカイブルー。秀樹の歌はたくさん、たくさん覚えている。熱心なファンじゃなかったけど、秀樹はわたしの子供の頃のアイドルナンバー1。だから、その人が突然亡くなってしまい、ショックだった。マイケル・ジャクソンが亡くなったときよりも、秀樹の死が衝撃だった。闘病生活でご苦労されていた姿も目に焼き付いている。それでも、秀樹がステージに立っていたので、安心していた。いつか、秀樹のステージを見に行こうと連れ合いと話してもいた。後悔先に立たず、逢いたい人には逢いに行き、観たいものは観ておいた方がよいと思う今日この頃。一期一会という言葉を心に刻もうと思う(今更だけど…)
今月、東映チャンネルで放映される「ザ・ヒットマン 血はバラの匂い」は芸能生活20周年を記念した作品。アイドル時代よりも一層渋くなった大人の秀樹に出会えるぞ。アクションも色っぽいシーンも満載。

202002

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
今月の特集のトップは「GReeeeN」映画プロジェクト スペシャル。話題の(というか、注目の)横浜流星さん、清原果耶さんの共演作「愛唄 -約束のナクヒト-」をTV初放映。「愛唄 -約束のナクヒト-」にも流星さん出てますよ。
「デジモンアドベンチャー THE MOVIE!」は会社の後輩にお勧めしなきゃ。デジモン大好きな方には、新作映画公開前に気持ちが盛り上がる特集。デジモン知らない方も、映画版を一挙放映なので、デジモンワールドを味わえる。
かめぽん個人的には「新幹線大爆破 4Kリマスター版」と「長靴をはいた猫」の4Kリマスター版2本は録画案件。
アニメ、特撮、時代劇、任侠映画まで幅広いラインナップで、今月もわくわくしていただきたい。

遅ればせながら、オリンピックイヤーの2020年も東映チャンネルをよろしくお願いいたします。

2020年2月1日 | カテゴリー: かめぽん
その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第12回『死ぬより辛い』

おかげさまで、今回をもって「東映テレビドラマLEGACY」も1周年を迎えました。どれだけいるか分からない読者のみなさん、ありがとうございます。今回も、先月に続いて『傑作推理劇場』より、1981年作品『死ぬより辛い』をご紹介します。『傑作推理劇場』の詳細については、当コラムの第8回をご参照ください。

さて、この『死ぬより辛い』ですが、原作は「ミステリーの女王」と呼ばれ、惜しくも2016年に世を去った夏樹静子先生です。代表作『Wの悲劇』や『弁護士 朝吹里矢子』シリーズ、『検事 霞夕子』シリーズなどは映像化も度々なされているので、知らないという方のほうが少ないでしょう。1986年、1987年、1990年には関西テレビで『夏樹静子サスペンス』も放送。本作と同じ原作が『死ぬよりつらい』として、1987年に田中美佐子さんの主演で再映像化されました。

『傑作推理劇場』版の『死ぬより辛い』で、脚本を手がけたのは池田悦子さん。『悪魔の花嫁』などの作品で、マンガ原作者としての活躍のほうが知られていますが、もともとは脚本家で、『キイハンター』(68~73年)や『ザ・ガードマン』(65~71年)などの人気ドラマに参加されていました。70年代後半からは、ほぼ完全にマンガ原作者の仕事にシフトしたため、1981年の本作への脚本家としての参加は、かなりのレアケースだったと言えるでしょう。『キイハンター』や、その流れを汲む『バーディ大作戦』(74~75年)でもコンビを組んだことがある、佐藤肇監督の作品だったために、執筆が実現したのかもしれません。

※『キイハンター』『バーディ大作戦』ともに、東映チャンネルで好評放送中です!

その佐藤肇監督は、本作の当時は『特捜最前線』(77~87年)に参加……と言いたいところですが、初年度にはメイン監督と言っても差し支えない活躍をしていたものの、3年目くらいからは本数が減り、結果的には1981年・春をもって番組を離れました。『特捜』においては、脚本家の大原清秀さんとの名コンビぶりが印象的で、「射殺魔・1000万の笑顔を砕け!」(第107話)や「ああ三河島・幻の鯉のぼり!」(第163話)など、ファンに人気の高いエピソードをいくつも手がけています。『傑作推理劇場』には、1980年の『魔少年』に続いての登板。『魔少年』については、すでに当コラムの第8回で詳述していますが、『傑作推理劇場』を代表する1本でした。そして『死ぬより辛い』も、一度観たら忘れられない、インパクト絶大な作品となっています――。

 

主婦の君子(秋野暢子)は、「昭栄鉄工」の工場で働く村上浩一(河原崎建三)と、職場恋愛を経て結婚しました。君子は結婚後に退職し、現在は生後4ヶ月の長女を含め、一家は団地で暮らしていました。少々手狭な団地ではありましたが、君子はじゅうぶん、幸せを感じていました。いずれは団地を出て、マイホームを手に入れられれば……。そんな夢を持てるだけでも、君子は満足だったのです。

しかし、そんな彼女の人生は、思いがけない「事故」によって急変してしまいます。ある日、君子は、長女のあゆみを寝かしつけて、そのまま商店街へと買い物に出かけました。夏の暑い時期だったため、窓は開けっ放しにしていました。そうしないと、あゆみが寝苦しくなると思ったからです。

ところが、天気が急変。雨だけでなく、強い風も吹いていたため、君子は急いで帰宅しました。幸い、あゆみはまだ目覚めておらず、君子はそのまま、夕食の準備に入りました。でも、あゆみはいつもと違い、なかなか起きません。気になった君子が部屋へ様子を見に行くと……なんと、あゆみの顔の上に、ベランダから風で飛んできたビニール袋が運悪くかかってしまい、あゆみは窒息していたのです。もし、帰宅したとき、すぐにこの異変に気づいていれば……! 時すでに遅く、君子がいくらあゆみを揺さぶっても、もう二度と、あゆみは目を覚ましませんでした。

やがて、浩一が帰宅。しかし君子には、この悲劇を夫に伝えることができませんでした。浩一のほうも酒を呑んできたらしく、すぐに就寝。絶望した君子は、このまま無理心中することも考えましたが、夫の洋服のポケットに入っていた一通の封筒が、君子に思いもよらない行動を起こさせることになるのでした。

 

冒頭の幸せそうな一家の様子から一転して、赤ん坊の窒息死という、衝撃の展開。ここで耐えられない気持ちになってしまう人も、いらっしゃるかもしれません。ちなみに筆者は、この作品を小学生時代にリアルタイムで観ていたのですが、窒息死のくだりの生々しい描写は、鮮明に記憶に残っていました。今回、このコラムを書くにあたって、ひと足早く再見させていただき、自分の記憶に(ほぼ)間違いがなかったことを確かめられましたが、同時に、こんなシーンをよくオンエアしていたなと、あらためて恐ろしくなった次第です。もちろん、いまなら、一連のシーンがどのような「トリック」で撮影されているかも分かるのでショックは少ないですが、当時のテレビ受像機のレベルを考えると、かなりの演出効果があったはず。秋野暢子さんの素晴らしい熱演もこのシーンのリアリティを高めていたと言えるでしょう。

さて、本作がすごいのは、ここからの展開です。とても優しかった夫・浩一の秘密とは? そして、そんな夫の「真実」を知った君子が実行に移したこととは……。赤ん坊のシーンでもし辛くなってしまったとしても、ぜひ最後まで、ご覧いただきたい作品です。『死ぬより辛い』というタイトルの絶妙さも、きっとお分かりいただけると思うので。

ちなみに、本作の劇伴音楽を担当したのは『キイハンター』などでおなじみ、また佐藤監督との仕事歴も長い菊池俊輔さん。劇中の「夏祭り」のシーンでは、当時すでに放送が始まっていたアニメ『ドラえもん』(79年~)の挿入歌「ドラえもん音頭」が流れるのですが、この曲も、菊池さんの作品だったりします。それにしても、この曲が流れる状況が状況なので、大山のぶ代さんの明るい歌声のミスマッチ感がハンパないです。当然ながら、これもまた見事な「演出」であり、主人公・君子の抱えた絶望感を際立たせていました。

 

それでは、また次回へ。なお、2月の「違いのわかるサスペンス劇場」では本作のほか、1982年の『春の傑作推理劇場』より『ラスト・チャンス』(出演:原田芳雄、大谷直子/東映チャンネル初放送)、1986年の『現代怪奇サスペンス』より『鏡の中の男』(監督:中島貞夫/出演:市毛良枝、前田吟)、1989年の『直木賞作家サスペンス』より『影の殺意』(監督:中原俊/出演:田中美佐子、高橋ひとみ)も放送されます。これらの作品群もぜひ、ご堪能ください!

 

文/伊東叶多

 

<放送日時>

『死ぬより辛い』

2月1日(土)13:00~14:00

2月22日(土)13:00~14:00

2月24日(月)16:00~17:00

2月29日(土)14:00~15:00

 

『ラスト・チャンス』

2月1日(土)14:00~15:00

2月8日(土)13:00~14:00

2月15日(土)14:00~15:00

2月22日(土)19:00~20:00

 

『鏡の中の男』

2月15日(土)13:00~14:00

2月22日(土)14:00~15:00

 

『影の殺意』

2月8日(土)14:00~15:00

2月29日(土)13:00~14:00

2020年1月27日 | カテゴリー: その他
その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第11回『暗い穴の底で』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、先月に続いて『傑作推理劇場』より、1981年作品『暗い穴の底で』をご紹介します。『傑作推理劇場』の詳細については、当コラムの第8回をご参照ください。ちなみに、今月放送される『傑作推理劇場』のもう1作は、同じく1981年作品の『異人館の遺言書』。原作が和久峻三先生、主演がフランキー堺さん、春川ますみさん……と言うと、テレビドラマに詳しい人なら誰もが、『赤かぶ検事奮戦記』シリーズ(80~92年/松竹)を思い浮かべるでしょうが、全く同じ座組みであるものの、こちらはまぎれもなく東映作品です。いずれも甲乙つけがたい出来なのですが、当コラムでは敢えて『暗い穴の底で』を採り上げさせていただきます。

 

『暗い穴の底で』の原作は、芥川賞作家の菊村到先生。政治評論家で、映画化もされた『小説吉田学校』の作者としても知られる戸川猪佐武さんの弟にあたります。本作の脚本を手がけた長坂秀佳さんが、後に映画版『小説吉田学校』(83年)の脚本にも関わっているのは、奇しき縁と言えるかもしれません。

プロデューサーは高橋正樹さん&白崎英介さん(テレビ朝日)と深沢道尚さん(東映)。監督は天野利彦さんです。高橋P&深沢P、そして天野監督と長坂さんとくれば、これはもう『特捜最前線』(77~87年)ですね。もともと『傑作推理劇場』は1980年と1981年の夏期、テレビ朝日の平日22時枠に特別編成(2週間)されたドラマシリーズで、その放送期間は、水曜夜22時枠だった『特捜』が休止となっていたのですが、『暗い穴の底で』は、まさにふだんは『特捜』が放送されている水曜日(1981年8月12日)に放送されたわけです。当時、『特捜』は放送5年目に入っており、人気もすっかり定着。中でも「脚本・長坂秀佳×監督・天野利彦」によるエピソードは、どれも高く評価されていました。『暗い穴の底で』に比較的、近い時期で言えば、放送200回記念の『ローマ→パリ縦断捜査!』前後編(1981年3月放送)が、長坂×天野コンビの作品。この名コンビを、高橋・深沢の両プロデューサーが、敢えて別作品で組ませたのが『暗い穴の底で』だったのです。

「大日本工業」で、将来の重役候補と目される若きエリート社員・宇佐見圭介(近藤正臣)は、あるトラウマを抱えていました。小学生のころ、彼は夏休みになると、叔母夫婦の家によく遊びに行っていました。それは、マリ子という年下の、可愛らしい女の子と会えるからでした。

あるとき、圭介はマリ子と一緒に、好奇心から古井戸へと入りましたが、自分の中から不意に湧き起こった性衝動に戸惑い、マリ子を置き去りにして、その古井戸から出て行ってしまったのです。そして翌日、再び古井戸へ行ってみると、なんと古井戸は土砂で埋まっていました。

いったい、マリ子はどうなってしまったのか。もしかしたら、マリ子が入っていたことが気づかれないまま古井戸は土砂で埋められ、そのままマリ子は死んでしまったのかもしれない――。怖くなって、それを確かめることもできないまま大人になった圭介は極度の「閉所恐怖症」になっていました。

そして、よりによって彼が直面している仕事は、超高層ビル専用の高速エレベーターの開発でした。このプロジェクトの責任者である彼は、当然ながらエレベーターの性能について顧客に説明する役目を担うのですが、深いトラウマを抱えた彼はエレベーターに乗ることができないのです。同僚の中には、圭介の「閉所恐怖症」に気づいている者もいました。このままでは、彼は出世のチャンスを逃してしまいます。

そこで圭介は「高石クリニック」という精神科の病院に通い始めました。やがて彼は、女医の高石美沙子(山口果林)と交際するようになります。美沙子は公私ともに圭介に寄り添い、彼のトラウマをなんとか取り除こうとしていました。

ところが、ある朝、新聞記事を読んだ圭介は驚愕します。「あの」古井戸から、白骨死体が発見されたというのです。死体は20年前に埋められたマリ子に違いないと思った圭介。美沙子はそんな圭介に対し、一種のショック療法として、古井戸へ行ってみることを勧めました。戸惑いながらも、幼き日の思い出の場所を訪れた圭介がそこで見たのは、当時の面影を残しつつ大人の女性へと成長した、マリ子の姿。そう、マリ子は生きていたのです。20年の時を経て、思いがけない再会を果たした圭介とマリ子は……。

……というのが、本作の前半のあらすじです。この後、圭介は20年前に古井戸とその周辺で起こった出来事の真相へと近づいていくことになりますが、それはあまりにも意外な顛末でした。『傑作推理劇場』の他の作品群と同じく、2時間ドラマではなく1時間ドラマだからこそ味わえる、スピード感のあるラストへの「畳みかけ」が見事です。

出演は近藤正臣さん、山口果林さんのほか、赤座美代子さん、天田俊明さん、根岸明美さん、谷村昌彦さん、井上昭文さんなど。谷村さんは、本作の放送の約2ヶ月後から『Gメン’75』にレギュラー入り。井上さんも本作の翌年から『西部警察PART-Ⅱ』にレギュラー出演しました。なお、脚本では主人公が勤める会社の社長が登場しており、伊豆肇さんがキャスティングされていましたが、完成作品では当該シーンがカットされているため、実際に撮影(出演)されたかどうかは不明です。

 

それでは、また次回へ。なお、1月の「違いのわかるサスペンス劇場」では、本作と『異人館の遺言書』のほか、『土曜ワイド劇場』の1979年作品『渓流釣り殺人事件~殺意の三面峡谷~』(監督:工藤栄一/出演:緒形拳、池上季実子、夏樹陽子)、1984年作品『授業参観の女』(監督:野田幸男/出演:緒形拳、萬田久子、伊東四朗)、そして当コラムの第7回でご紹介した『火曜サスペンス劇場』の1984年作品『観覧車は見ていた』(監督:鷹森立一/出演:市毛良枝、丹波哲郎)も放送されます。これらの作品群もぜひ、ご堪能ください!

 

文/伊東叶多

 

<放送日時>

『暗い穴の底で』

1月4日(土)19:00~20:00

1月11日(土)14:00~15:00

1月25日(土)11:00~12:00

 

『異人館の遺言書』

1月3日(金)19:00~20:00

1月11日(土)13:00~14:00

1月25日(土)12:00~13:00

 

『渓流釣り殺人事件~殺意の三面峡谷~』

1月4日(土)11:00~13:00

1月18日(土)13:00~14:50

 

『授業参観の女』

1月4日(土)13:00~14:50

1月7日(火)22:00~24:00

1月18日(土)11:00~13:00

 

『観覧車は見ていた』

1月8日(水)22:00~24:00

1月11日(土)11:00~12:50

1月25日(土)13:00~14:50

2019年12月24日 | カテゴリー: その他
かめぽん

チューもく!! さようなら2019年、そしてオリンピックイヤーだね2020年

いつも11月から師走は、仕事が詰まるかめぽんです。以前は年またぎの仕事も入ってましたが、ぎっくり腰、インフルエンザと2年続けて新年早々倒れたので、もう無理が利かないんだなと実感。昨年から年末年始はのんびり過ごすことに決めました。TVの前でぬくぬく過ごすお正月。2020年は年明けの休みが長い気がします。好きな番組を眺めつつ、まったりした年末年始。いいものです。
今年も、訃報が相次ぎました。12月には、東映チャンネルでもお馴染みの梅宮辰夫さんも。悲しい。昭和がどんどん遠くなる気がします。東映チャンネルでも特集した京マチ子さん、なつぞらで話題になった「太陽の王子ホルスの大冒険」でヒルダを演じた市原悦子さん、特撮や時代劇でお馴染みの山本昌平さん…
かめぽんが小娘だった頃、同人誌等でインタビューさせていただいた我がハーロック井上真樹夫さんも亡くなりました。素敵な声で名前を呼ばれたときの感激は、一生の宝物です。
素晴らしい作品、素敵な思い出をありがとうございました。

201912bk

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
12月は「映画『カツベン!』公開記念 監督 周防正行の無声映画講座」が気になります。TVで無声映画、しかも弁士付きってなかなか観られない企画。「没後5年メモリアル特別企画【高倉健×菅原文太 共演全12作品アンコール放送!後篇】」や「セントラル・アーツの軌跡 特別篇 松田優作メモリアル 後篇」も年末にゆっくり楽しめる。かめぽんは年末は「忠臣蔵特集」を観たいので、今から楽しみ。「赤穂城断絶」大好きなんだもん。
年明けは特撮ヒーローに「劇場版 ドラゴンボール ブロリースペシャル」。三が日は「新春大作時代劇特集」をまったり観つつ、初売りにGO。

今年も来年も、わくわくな東映チャンネルをお見逃しなく〜

2019年12月16日 | カテゴリー: かめぽん
その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY   第10回『百円硬貨』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、先月に続いて『傑作推理劇場』より、1981年作品『百円硬貨』をご紹介します。『傑作推理劇場』の詳細については、当コラムの第8回をご参照ください。

 

『百円硬貨』の原作は、松本清張先生。古くは1950年代から、松本清張先生の作品は頻繁に映画化・テレビドラマ化がなされてきましたが、特にテレビ界で「2時間ドラマ」が隆盛を誇った80年代は、どの局もこぞって、「確実に視聴率が獲れる」清張作品の映像化に力を入れていました。同じ原作が繰り返し映像化されることも多く、脚本や演出、キャスティングなどを比較して楽しんでいる方も、けっこういらっしゃるのではないでしょうか。

この『百円硬貨』は、1978年に「小説新潮」に掲載された後、翌年に発行された短編集「隠花の飾り」に収録された短編。1981年に放送された本作が、初の映像化でした(後の1986年6月、フジテレビ系列の関西テレビの製作により、池上季実子さんと奥田瑛二さんの主演で再び映像化されています。ちなみに、2人が共演した『男女7人夏物語』は、同年7月のスタートでした)。

本作のプロデューサーは高橋正樹さん(テレビ朝日)と阿部征司さん(東映)。監督が野田幸男さん、脚本が橋本綾さん、助監督に三ツ村鐵治さんと、『特捜最前線』(77~87年)に関わった方々の名前が並びます。野田監督は、東映では言うまでもなく『不良番長』シリーズのメイン監督(第1作をはじめ、全16作のうち11作を担当)として有名ですが、1970年代後半からは、主にテレビ作品で活躍。『傑作推理劇場』では、すでに東映チャンネルで放送済みの1980年作品『殺意』(主演:坂口良子)に続く登板でした。

 

いまはあまり見かけなくなった公衆電話で、悲壮な表情を浮かべて、相手と話しているひとりの女性がいました。彼女の名は大川伴子(いしだあゆみ/原作では「村川伴子」)。伴子はどうやら「すべてを捨て」て、ひとりの男と添い遂げる決心をしたようです。「明日の朝、必ず迎えに来て」と約束して、伴子は東京駅から新幹線に乗りました。合計13時間の旅を終えたころ、彼女は山陰の田舎町に着き、男の胸に飛び込んでいるはずでした――。

話は、伴子が男と出会った、4年前へとさかのぼります。伴子は、小さな銀行の出納係として働く、28歳の女性でした。毎日、毎日、銀行と自宅のアパートを行き来するだけの、変わり映えのしない日々(伴子という名前は、判で押したような生活を送る女性というイメージから来ているのかもしれません)。ある朝、彼女は通勤のためにバスに乗り込む際、慌てていたのでうっかり百円を落としましたが、いつもと同じバスに乗ることを優先しました。この「百円硬貨」が、後に自分の人生を左右することになるなんて、伴子は全く考えもしませんでした――。

この退屈な人生を変えたいと、漠然と考えていた伴子は、バス通勤の途中で目にとまった自動車を購入したいと思い立ちます。セールスマンを通じて、その自動車を購入した伴子。彼女の人生は確かに変わりました。この一件を通じて知り合った、妻子持ちのセールスマン・細田龍二(川地民夫)と不倫の関係に陥ったのです。

やがて伴子は細田との結婚を考えるようになりました。細田のほうも同じ気持ちでしたが、細田は妻(上村香子)との間に6歳の長女もおり、夫婦仲こそ冷えているものの、妻は別れる気など毛頭ないようでした。

しかし、あるときを境に、状況が変わりました。慰謝料3000万円を出せば、妻は細田との離婚に応じると言うのです。どうしても細田と結婚したい伴子は、自分の勤め先から、金を横領するという行動に出ました。長年にわたって銀行で毎日、同じ仕事を続けてきた伴子には、「完全犯罪」を成功させる自信があったのです。ある土曜日の午後、伴子の「犯行」は完了しました。そして彼女は東京駅近くの公衆電話から山陰の田舎町で待つ細田に連絡して、新幹線に飛び乗ったのでした。果たして、伴子の人生を賭けた「完全犯罪」の行方は……?

 

つい、主人公に感情移入して観ていると辛くなってしまう、あまりにも皮肉なラストが待ち受けています。伏線の張り方の巧さは、さすがに清張先生というところでしょう。なお、本作のオチは、現在の世の中では成立しにくい(全く同じ状況になること自体は考えられるものの、オチの「切れ味」としては落ちる)ことを補足しておきます。もちろん、そのことが本作のクオリティを左右するわけではないので、念のため……。

いしだあゆみさんが演じる伴子は、回想で描かれる「28歳」の時点で、職場で「オールドミス」と呼ばれている設定。ここにも、結婚適齢期が若かった時代と現在の大きなギャップを感じます。1981年のいしださんといえば、映画『駅 STATION』で高倉健さんが演じた主人公の別れた妻を演じたり、テレビドラマ『北の国から』でも、同じく主人公・黒板五郎(田中邦衛)の妻を演じたり、といった時期。そもそも伴子のような「婚期を逃した女性」のキャスティングとしてリアリティがあるのか、とも思ってしまいますが、そこは流石にいしださんで、素晴らしい役作りで説得力を与えていました。いしださんの渾身の演技だけでも、本作は一見の価値アリと言えるでしょう。年の瀬、何かと忙しい時期になりますが、放送日にはぜひ、テレビの前に座っていただければ幸いです。

 

それでは、また次回へ。なお、12月の「違いのわかるサスペンス劇場」では、本作のほか、同じく『傑作推理劇場』1981年作品より、『雪の螢』(原作:森村誠一/監督:浦山桐郎/出演:大空眞弓、河原崎長一郎ほか)も放送されます。『火曜サスペンス劇場』の1986年作品『あなたから逃れられない』(原作:小池真理子/監督:長谷部安春/出演:佐藤友美、仲谷昇ほか)も久しぶりの放送ですね。これらの作品群もぜひ、ご堪能ください!

 

文/伊東叶多

 

<放送日時>

『百円硬貨』

12月7日(土)13:00~14:00

12月21日(土)14:00~15:00

 

『雪の螢』

12月7日(土)14:00~15:00

12月21日(土)13:00~13:50

 

『あなたから逃れられない』

12月14日(土)13:00~14:50

12月28日(土)13:00~14:50

2019年11月26日 | カテゴリー: その他
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