その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第5回 『0計画(ゼロプラン)を阻止せよ』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、『土曜ワイド劇場』の1979年作品『0計画(ゼロプラン)を阻止せよ』をご紹介します。『土ワイ』はスタート当初(1977年7月)から1979年4月まで、2年近くの間はいわゆる「2時間ドラマ」でなく、「90分ドラマ」でした。本作は1979年3月の放送作品でしたが、特例的に2時間枠で放送。それだけ力が入れられていたことがうかがえます。

ある朝、ルポライターの左文字(黒沢年男)が目を覚ますと、留守番電話に友人のカメラマン・高田(加藤健一)からの切迫したメッセージが残されていました。しかし、“0計画(ゼロプラン)”“2月”というキーワードが聞き取れたのみで、他の詳しいことは何も分かりません。いったい高田は左文字に何を伝えたかったのでしょうか……。

その高田が死体で発見されたという報を受けて、左文字は旧知の新宿署・矢部警部(織本順吉)を訪ね、捜査に協力したいと申し出ますが、矢部はこれを拒否。左文字は当面、単独で高田の死の謎と、“0計画”&“2月”が意味するものを探っていくことになりました。

そのころ、伊豆七島の「神波島」(※架空の島名です)の診療所で、ひとりの医師が“0計画”の始動準備を終えようとしていました。医師の名は神崎(児玉清)。かつて国立中央総合病院の内科部長の座を目の前にしながら、派閥争いでライバル(佐原健二)に敗れた男でした。神崎による、あまりにも大胆な「復讐劇」が幕を開ける中、まだ新宿署も左文字も事件の真相に辿り着けずにいました……。

……というのが、本作の序盤のあらすじです。冒頭で、メインタイトルの後に表示されるサブタイトルは「総理大臣誘拐!!」。そう、「0計画」とは首相の誘拐によって多額の身代金を手に入れることなのですが、いったい神崎はどのような方法でSPたちにガードされた首相と接触するのか、また左文字や警察はどうやって犯人に辿り着くのか……といった点が本作の見どころとなります。

原作は西村京太郎先生の「左文字シリーズ」の1本で、1977年に刊行された「ゼロ計画を阻止せよ」。左文字が初登場したのは1976年の「消えた巨人軍」で、こちらは1978年に、すでに実写ドラマ化されていました。このときの左文字役は藤岡弘、さん。ヒロインの史子(水沢アキ)は矢部警部(大坂志郎)の次女で、左文字のフィアンセという設定になっていました。本作では、史子(長谷直美)は左文字の妹。ちなみに原作(左文字と史子はすでに夫婦となっている)では、左文字家の夫婦喧嘩の末に、事務所を飛び出した史子が、犯行グループを裏切って逃げてきた男から「0計画」のことを偶然に聞いてしまう、という展開でしたが、この部分は上記のあらすじのように変更されました。

さて、本作で特に光るのが、神崎役の児玉清さんです。児玉さんといえば、東宝の二枚目スターとして活躍した後、1970年代前半は『ありがとう』などの人気ホームドラマに立て続けに出演。1975年からは『パネルクイズ アタック25』の司会も務めていました。本作では、そんな当時のパブリックイメージを覆すような熱演。出世コースを外れてしまった男の悲哀と執念を見せつつ、インテリらしいクールさも兼ね備えた、的確な役作り。観ているうちに、児玉さんが演じる神崎のほうに、ついつい感情移入してしまいます。

また珍しいのは、特撮スタッフがクレジットされていることです。該当場面は、(ミニチュアの)ヘリコプターの爆発シーン。ダイナマイト爆破のシーンでは、東映の子ども向け特撮番組からのライブラリー(流用)・フィルムも使用されているようです。特撮監督としてクレジットされているのは矢島信男さんと佐川和夫さん。いずれも日本の特撮映像界の大御所です。なお、全くの偶然でしょうが、本作の放送日(1979年3月3日)は、スーパー戦隊シリーズに初めて「巨大ロボット」が登場した『バトルフィーバーJ』第5話「ロボット大空中戦」が放送された日でもありました。この作品の特撮監督も、矢島さんと佐川さんが連名で手がけています。

そして、ドラマファンはやはり本作でも、多彩なバイプレーヤーたちの登場に目を奪われることでしょう。「影の長老」と呼ばれる、政界の黒幕役の内田朝雄さんなどは、まさにハマり役。その他の政界関係者たちに扮するのも、「おなじみの顔ぶれ」と言えるベテラン陣です。若手(当時)では、神崎の計画に協力する共犯者として片桐竜次さん、辻萬長さん、風戸佑介さんが出演。風戸さんは本作の後、早々に引退されましたが、片桐さんは『相棒』シリーズで、辻さんは『いだてん』や『なつぞら』などのドラマで、近年も活躍されていますね。

それでは、また次回へ。なお、7月の「違いのわかるサスペンス劇場」では、本作のほか、1983年の『火曜サスペンス劇場』作品である「夕陽よ止まれ」(出演:丹波哲郎、野際陽子、紺野美沙子ほか)も放送されます。時期的には、長寿番組となった『Gメン』シリーズを終えたころの丹波さんが、『Gメン』の“ボス”とは異なるイメージの主人公を好演した作品で、味わい深い演技を見せてくれています。こちらもぜひ、ご覧になってみてください!

文/伊東叶多

<放送日時>

『0計画(ゼロプラン)を阻止せよ』

7月6日(土)13:00~14:50

7月20日(土)13:00~14:50

 

『夕陽よ止まれ』

7月13日(土)13:00~15:00

7月27日(土)13:00~14:50

 

2019年7月2日 | カテゴリー: その他
かめぽん

チューもく!! 日野所長、マリコさんに翻弄されつつも頑張る、上司の鏡

「科捜研の女」大好きです。好物です。沢口靖子さん演じる榊マリコ、リアルで同僚だったら本当に辛い。マイペース、人の言うこと聞かない、自分勝手、走り出したら止まらない(^_^;)。そんなマリコさんに上司や同僚たちはなんと深い愛を示すのだろうか。で、日野所長。文書鑑定の専門家として招かれ、着実に実績を積み所長へと昇進。だが、長時間労働で心疾患になって死にそうになったりと、苦労だらけ。マリコさんたち部下と上役に挟まれ四苦八苦する場面も。…頑張れ!所長!
今月は「科捜研の女スペシャル」と題して、シーズン3、4の初回スペシャルと5、6の最終回スペシャルを放映。マリコさんに酷使される日野所長(まだこの頃は所長じゃないけど)をはじめとする同僚たちを応援したい。

201907

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今月は夏休み目前、ONE PIECE STAMPEDE 公開記念 ワンピース スペシャル Vol.1。「デジモンアドベンチャー THE MOVIE!」はかめぽんの後輩がリアル世代。子供の頃観ていた作品、いまも楽しめるなんて、いい時代だ。かめぽんは朝ドラで話題の「白蛇伝」←DVDあるんだけど、を観るぞ!
「東映時代劇スター列伝Vol.4 東千代之介」。千代之介さんのはんなりした風情が好き。仇討ちもの元祖の「曽我兄弟 富士の夜襲」は必見。
他にも特撮、時代劇、任侠もの、アニメと盛りだくさん。大人にはちょっぴりお色気のラインナップも。暑い夏はスカッとする作品で乗り切ろう。

今月も、わくわくな東映チャンネルをお見逃しなく〜

2019年7月1日 | カテゴリー: かめぽん
かめぽん

チューもく!! 昭和の歌姫、今も心にずんと響く

橋蔵さん、千恵蔵御大に続く「東映時代劇スター列伝」は美空ひばりさん。かめぽんの連れ合いはひばりさんの東京ドームコンサートを拝見する機会があったのだが、心にずんと響いたそうだ。翌年、ひばりさんは52歳で亡くなる。若い。いまのかめぽんよりも若い。子供の頃のひばりさんはすでに大スターで、亡くなった年齢を伺ったときに「え?」っと思うほどずっと、ずっと大人に感じられた。ひばりさんの歳を超えたかめぽんだが、なんだかずっと子供で、トホホと情けなくなっている。昭和のスターさんたちはかめぽんのイメージする大人そのものだった。
没後30年。長いようであっという間。若くて、溌剌とした時代劇のひばりさんを堪能しよう。橋蔵さんとの共演の「振り袖太鼓」「花笠若衆」里見浩太朗さんと共演の「いろは若衆 ふり袖ざくら」「いろは若衆 花駕篭峠」など6本をオンエア

201906

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
今月は日本映画を牽引する俳優・監督の作品の特集や、お馴染み特撮ヒーロー特集、相棒-劇場版特集、任侠から時代劇まで盛りだくさん。懐かしのマジンガーZ特集もあるし(おっぱいロケットに衝撃を受けた子供時代が懐かしい)、名作アニメ特集には大好きなハッスルパンチが。某国営放送の朝ドラのモデルって東映動画だよね。ハッスルパンチを観て、あのオープニングを観ると、きっと何か感じるものがあるはず。ちなみにかめぽんは東映アニメーション・ファンクラブ会員でした

今月も、わくわくな東映チャンネルをお見逃しなく〜

2019年6月1日 | カテゴリー: かめぽん
その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第4回『女からの眺め』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、『火曜サスペンス劇場』(81~05年)において、1987年の正月第1弾作品として放送された「女からの眺め」をご紹介します。脚本は、NHK『天下御免』(71~72年)、『夢千代日記』シリーズ(81~84年)、『花へんろ』シリーズ(85~88年)などで知られる早坂暁。監督は、本作放送の翌年よりスタートした『はぐれ刑事純情派』(88~05年)で一貫してメイン監督を務め、唯一の劇場版も手がけた吉川一義。そしてキャストは文中で紹介していきますが、主演級がズラリと揃った豪華な布陣となっています。

総合病院の「聖カトリーヌ病院」で内科医を務める鶴見朝子(岡田茉莉子)はひそかに、病院の隣にある「三王デパート」の売上金20億円の強奪計画を立てていました。朝子が声をかけていた「共犯者」は、すべて女性ばかり――。

詐欺にあって大金を失った、看護師の波崎くに子(樹木希林)。妻子ある上司との不倫関係の末に捨てられた「三王デパート」経理部員・原まゆみ(川上麻衣子)。夫が事故死したシングルマザーで、乳癌のため余命宣告された芸者の元木英子(永島暎子)。舞台の人気女優でありながらも、やはり病のため、やがて脚を切断しなければならない麻生花絵(三ツ矢歌子)。かつて女郎屋にいた老婦人で、現在は聖カトリーヌ病院で清掃員を務める土井原玉代(加藤治子)。そして、モデルだが暴漢に襲われ、性病に感染した辻井ユキ(城源寺くるみ)。この6人に朝子を加えた7人がフルメンバーです。朝子自身もまた癌患者で、しかも母・カズエ(鈴木光枝)は認知症にかかっていました。

それにしても、女性ばかりで大金を強奪しようとは、なんとも大胆な計画です。しかし、朝子やくに子には、勝算がありました。

7人が目指すのは、計画を成功させて、都会を離れたユートピアで、ひっそりと生きること。決行日は12月15日。7人それぞれの明確な役割も決まりました。果たして、20億円の強奪はうまくいくのでしょうか? それとも……!?

 

……というわけで、プロット自体はシンプルながらも、ひじょうに興味をそそられるものです。さまざまな背景を持った7人の女性が、完全犯罪に挑む。ネタバレぎりぎりのことを書かせていただくと、女性陣のキャスティングが豪華すぎたせいでもないでしょうが、本作では、いわゆる「捜査関係者」にあたるキャラクターは、ほぼ出てきません。そんなヒント(?)から、展開を想像していただくのも面白いのではないでしょうか。

全体の構成としては、クライマックスの「犯行」からは、とてもスピーディーに描かれていきます。ドラマの中心を成すのは、犯行へ至るまでの7人の女性の関わりです。とりわけ中盤の「作戦会議」の一連は圧巻。なんといっても、岡田茉莉子をはじめとする「犯行グループ」の女優たちは、本来はそれぞれが主演を張れるレベルなのですから(ユキ役の城源寺くるみは「にっかつロマンポルノ」最晩年にデビューし、活躍していた若手女優。『アリエスの乙女たち』などテレビドラマの出演も多い)。

中でも、くに子役・樹木希林と玉代役・加藤治子のちょっとしたやりとりは、本作の良いフックとなっています。ご存知のように、このふたりは『七人の孫』(64~66年)や『寺内貫太郎一家』(74~75年)などでも共演。お互いを知り尽くした女優同士だけに、その「かけあい」の妙は抜群なのです。さらに、「犯行」の真っ只中においては、まゆみ役の川上麻衣子も体を張った熱演を見せます。当時20歳で、7人の中でも最も若かったのが彼女ですが、並み居るベテラン女優たちに負けない存在感を示しました。

他のキャストとしては、ユキを診察する女医・植村役に黒田福美、まゆみの上司で経理部長の平田役に浜畑賢吉、朝子の夫・和夫役に石山雄大、花絵がペットを入院させる犬猫病院の医師役に池田鴻、「三王デパート」の守衛役に相馬剛三、デパートの売上を受け取りに来る銀行員役に津山栄一、など。ちなみに池田鴻はアニメ『機動戦士ガンダム』(79~80年)の主題歌シンガーとしても知られますが、惜しくも本作が放送された翌年、48歳の若さで世を去っています。

劇中、ちょっと驚くのが、くに子の台詞で「有楽町三億円事件」に触れた箇所があることです。同事件が発生したのは1986年11月25日で、本作の放送の6週間前。少なくとも該当シーンの撮影は、この事件の発生後に行われていたわけで、2時間ドラマとしては、意外にタイトなスケジュールだったことがわかります。とはいえ、この台詞の存在は、特にリアルタイムの視聴者に対しては、効果を与えていたと言えるでしょう(同事件は、1988年4月に主犯格がメキシコで逮捕されたことで終結しました)。

最後に、本作の味わい深いタイトルについて。朝子の務める病院から犯行現場となるデパートが見えることや、女性だけによる犯罪計画であることが、もちろんタイトルの由来となっているのですが、作品をトータルで観ていると、その他にもタイトルに込められた意味がいくつも感じられます。「昭和」末期に企画された、2時間ドラマの秀作を存分にご堪能ください。

それでは、また次回へ。なお、6月の「違いのわかるサスペンス劇場」では、本作のほか、1981年の『土曜ワイド劇場』作品である「死刑執行五分前」(主演:若山富三郎、中村玉緒)も放送されます。こちらの原作は、戦前から売れっ子の脚本家として活躍し、1950年代の邦画全盛期に東映京都撮影所作品を数多く手がけて「比佐天皇」の異名をとった比佐芳武(1981年12月没)。脚本家としての活動は70年代前半までだったようで、本作はある意味での「遺作」と言えるかもしれません。「女からの眺め」と併せ、ご覧になってみてください!

文/伊東叶多

 

<放送日時>

『女からの眺め』

6月8日(土)13:00~

6月22日(土)13:00~

6月25日(火)22:00~

 

『死刑執行五分前』

6月1日(土)13:00~

6月15日(土)13:00~

6月29日(土)13:00~

2019年5月21日 | カテゴリー: その他
かめぽん

チューもく!! 平成から令和へ 新しい時代もよろしくね

「キーハンター」を観て国際秘密警察へ就職したかった昭和の夢見る夢子も、遂に3世代目に突入。昭和、平成、そして令和。おばあちゃんが明治、大正、昭和と生きてきたのを思うと、なんか急に年取った気が…いや、なんか、いい時代を過ごしてきたなとしみじみ思うかめぽん。TVを観て、どっぷり想像の世界に浸れたのは平和な世界だったということだもの。
で、「アイフル大作戦」。「キーハンター」の余波に浸り、かめぽんはすぐに本作を観て探偵学校に行きたくなった。いや、そんな学校、多分なかったけど。色っぽい校長先生@小川真弓さんに、可愛らしい生徒たち…可愛いというか、大人びているというか、兎も角、オシャレだけど、ちょっとおっちょこちょいな生徒たちの活躍をワクワクしてみていた。かめぽんの大好きな西田健さんも若くてカッコいい。新しい時代になったときに、また大好きな「アイフル大作戦」を楽しめるなんて、本当に嬉しいぞ。今回のイラストは60年代から70年代のイメージで描いてみた。その時代のものって、今もすごく心惹かれる。ファッションも人々の立ち居振る舞いも、なんか憧れる。かめぽんの頭に描く大人って、多分この時代のイメージ。自分は年とっても、キーハンターの野際さんのようにも、アイフルの小川さんのようにもぜんぜんなれない。ああ、年をとればみんな素敵な大人の女性になれると思っていたのになあ

201905

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
今月はさらば平成ということで、平成ライダー大集合だったり、平成の刑事物の代表作「相棒」のスペシャルも。昭和のマジンガーが平成になったらこうなったという「劇場版マジンガーZ/INFINITY」が令和に登場。時代の移り変わりを楽しめる。東映の時代劇スター片岡御大の特集や、昭和のやさぐれBOYS、ビー・バップ・ハイスクール特集も。昭和から平成、そして令和とじっくりと時代の流れを味わっていただきたい。

今月も、わくわくな東映チャンネルをお見逃しなく〜

2019年5月7日 | カテゴリー: かめぽん
その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第3回『女教師』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、先月に続いて『土曜ワイド劇場』(77~17年)の初期作品より、『動脈列島』(74年)や『捜査一課長』(78年)などで知られる清水一行の原作を、脚本・新藤兼人、監督・齋藤武市という本格派スタッフで映像化した『女教師』をご紹介します。先月の『殺意の重奏』の放送年月日は1978年5月27日でしたが、本作はそれに遡ること6週間、1978年4月15日の放送でした。本作もまた、『土ワイ』が2時間枠ではなく、90分枠だった時期の作品。冒頭のショッキングな展開の後、「第2&第3の事件」が発生するのは中盤以降なのですが、その構成の妙には、唸らされること必至です。演技派・個性派のキャストが、まさに適材適所で配されており、実に味わい深い作品となっています。

 

土曜日の午後5時。西部中学の音楽教師・田路節子(和泉雅子)は突然、校内で数人の男たちに襲われました。黒いビニール袋を被せられたため、犯人たちの顔を確認することはできませんでしたが、主犯が3年3組の江川秀雄(山本茂)であることだけは、その「声」で分かりました……。

ショックを受けた節子は、考えた末、神野校長(根上淳)の家に、どうすべきか相談に行きますが、神野は節子のことよりも事件が周囲に与える影響のことばかりを気にしており、その態度に、節子は落胆します。神野は翌日の日曜日、3年3組の担任である瀬戸山(小池朝雄)や、生活指導主任の影山(黒沢年男)と会い、この事件への学校としての対応についてコンセンサスをとろうとしますが、被害者である節子のことがないがしろにされている点について、影山は激しく違和感を覚えるのでした。

週が明けて、月曜日。節子は同僚の教師たちからの冷たい視線を感じます。事件のことは神野や影山といった、一部の人間しか知らないはずなのに……!? しかも、小林先生(横光克彦)によると、節子のほうから江川を誘惑したという噂が、まことしやかに流れているというのです。いたたまれなくなった節子は辞表を提出し、傷心のままに、故郷の沼津へ。ところが、時を同じくして、3年生の修学旅行中に、とんでもない事件が発生します――。

 

この『女教師』ですが、『土ワイ』版(本作)の約半年前、「日活ロマンポルノ」の1作としても映像化されました。こちらも脚本・中島丈博、監督・田中登という気鋭のスタッフによる作品で、主演を務めた永島暎子はこの作品での好演が認められて、1978年の「エランドール賞」新人賞を受賞しました。ちなみに日活版では、江川役で古尾谷雅人(当時は「古尾谷康雅」名義)がデビュー。小林先生役は蟹江敬三が演じています。

日活版と『土ワイ』版の展開は随所で異なるのですが、共通しているのは、ひとりの女教師への暴行事件を通して、教育現場、ひいては社会全体の暗部が明るみに出ていくという構図です。中学3年生が女教師を襲うという発端は衝撃的ですが、その凶行によって炙り出されたのは、周囲の人々の「真の姿」でした。冒頭の事件と、中盤で発生する第2・第3の事件がどのような「つながり」を見せていくのか、ぜひ本編でご確認ください。

 

本作の主演・和泉雅子は日活で吉永小百合や松原智恵子とともに一時代を築いた人気女優。70~80年代は主に、テレビドラマで活躍。後に、日本人女性として初めて北極点に到達(1989年=平成元年)したことでも、話題となりました。

あらすじで紹介しているキャスト以外では、節子の恋人で、事件のことを聞かされて戸惑う高校教師・高村役に谷隼人。江川の両親役に深江章喜、加茂さくら。そして刑事役で名古屋章も出演しています。珍しいところでは、『奥さまは魔女』のナレーションで知られる中村正が、本作でもナレーターとして参加。もちろん、『奥さまは~』のような軽妙さは抑えられ、ドキュメンタリータッチの語りを披露しています。

小林先生役の横光克彦は、本作の放送の2週間前(3月末)から『特捜最前線』(77~87年)に紅林刑事役でレギュラー入りしたばかり。さらに、その2ヶ月前には『土ワイ』の裏番組だった『Gメン’75』(75~82年)に刑事役でゲスト出演していました。当時の状況からすれば、この小林先生役は、ちょっと意外な役どころかもしれません。また、江川の不良仲間のひとり・田代役で出演しているのは、1972年に『超人バロム・1』という変身ヒーロー作品において、木戸猛役で出演していた飯塚仁樹。70年代の末頃に子役を引退したと思われるため、本作はそのキャリアとしては終盤の作品にあたるようです。

……それでは、また次回へ。なお5月の「違いのわかるサスペンス劇場」では、本作のほか、1984年の『火曜サスペンス劇場』作品である「妄執の女」(主演:市原悦子)も放送されます。どうぞ、ご期待ください!

文/伊東叶多

<放送日時>

『女教師』

5月4日(土)13:00~

5月14日(火)11:00~

5月18日(土)13:00~

 

『妄執の女』

5月11日(土)13:00~

5月16日(木)11:00~

5月25日(土)13:00~

2019年4月15日 | カテゴリー: その他
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