第50回を迎えたところでお休みしておりました「東映テレビドラマLEGACY」ですが、4カ月ぶりに、(少々リニューアルしつつ)お届けします。今後も不定期で続けていければと考えておりますので、どうぞよろしくお願いします。
さて今月のトピックスは、なんといっても【没後20年総力特集 映画監督 深作欣二】にて、深作監督が東映で唯一、手がけたスペシャルドラマ『ダブル・パニック’90 ロス警察大捜査線!』が放送されることでしょう。
中村雅俊さんが「ロサンゼルス市警アジア特捜隊」の捜査官・マイケル村上を演じる『ロス警察』シリーズは、これが2作目。第1作『ロス警察1989 ビバリーヒルズ殺人事件』と第3作『ロス警察’94 ウエストコースト殺人事件』は、いずれも佐藤純彌監督が手がけています。第2作では、佐藤純彌監督は脚本を担当し、「脚本:佐藤純彌/監督:深作欣二」という強力タッグが組まれました。放送は1990年10月14日。テレビ朝日「日曜洋画劇場」の特別企画という扱いでした。
企画製作協力という形で本作に関わっているのが、実際にロス市警アジア特捜隊のチーフとして活躍し、「ロス疑惑」事件で日本でも有名になったジミー佐古田さんです。そして製作は「近藤照男プロダクション」。そう、『キイハンター』(68年)や『Gメン’75』(75年)などのプロデューサーを務めた近藤照男さんが、東映を退社後に設立したプロダクションです。1990年代にはTBSで石ノ森章太郎先生が原作の『HOTEL』をドラマ化して長期シリーズに育て上げるなど、独立後もヒットメーカーだった近藤さんにとって、深作監督や佐藤監督が「盟友」と呼べる存在。本作には他にも撮影の下村和夫さんなど、近藤さんの作品にゆかりのスタッフが数多く参加しています。その一方で、後に「平成仮面ライダーシリーズ」をヒットさせ、最新作『仮面ライダーガッチャード』(9月より放送開始!)においてもパイロット監督を務める田﨑竜太監督の名前が助監督としてクレジットされている点も東映ファンにとっては注目ポイントでしょう。
さて、本作のストーリーですが、1990年といえば、(実際には崩壊寸前でしたが)日本はバブル景気の真っ只中にありました。日本の企業もどんどん海外進出を果たしていましたが、「人種の坩堝」ロサンゼルスにおいて、「金持ち」日本人は犯罪の格好の標的となっていました。
マイケル村上の妻・ナンシー(藤真利子)はある朝、体調を崩した柿沢夫人(中田喜子)から、娘・絵利子(塙紀子)を学校まで送ってほしいと頼まれました。そこでナンシーは娘・スージーと絵利子を乗せて車を走らせましたが、3人は誘拐されてしまいます。
誘拐犯の目的は、大宝商事の支店長・柿沢(小野寺昭)を脅迫して、身代金を手に入れることでした。犯人たちは、柿沢の妻と娘を誘拐するつもりが、実際に車に乗っていたのは娘のみで、あと2人(ナンシー/スージー)については想定外でしたが、そのまま計画を続行します。誘拐犯「ビッグD」からの電話を受けた柿沢は、すぐにマイケルに連絡。マイケルもまた、自分の妻と娘が誘拐されたことを知るのでした。
犯人からの要求は、1時間以内に小額紙幣で50万ドルを用意しろ、というもの。柿沢は系列銀行の水木支店長(角野卓造)に頼んで、なんとか身代金を準備できましたが、柿沢とマイケルが銀行から受け渡し場所へ向かおうとしたとき、そこへ銀行強盗がやってきます。柿沢たちは人質になってしまいました。短時間のうちに、2つの事件(ダブル・パニック)に巻き込まれた、マイケルと柿沢、そしてその家族。果たして、彼らの運命は?
序盤から緊迫感に満ちた展開が続く物語で、2時間が短く感じられることでしょう。少しマニアックな話をすれば、「誘拐事件が発生し、身代金が必要になるが、その準備の過程で銀行強盗事件も発生して、身代金を動かせなくなる」という、2つの事件の「同時進行」プロットは、『Gメン’75』の300回記念作品「盗まれた女たち」前後編(1981年放送)からの継承です。この回の脚本も佐藤純彌監督が手がけており、いわゆる「セルフ・リメイク」作品と言えるでしょう。もちろん、舞台が日本からロサンゼルスへと移ったことで、細かい部分は変更されています。「盗まれた女たち」をご覧になったことがある方も、この別パターンを楽しんでいただけるのではないでしょうか。放送を、どうぞお楽しみに!
文/浮間舟人(Light Army)
ダブル・パニック’90 ロス警察大捜査線!
放送日時
2023年9月2日(土)15:30~18:00
2023年9月14日(木)20:00~22:30
2023年9月25日(月)12:00~14:30