その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY                              第40回『悪魔が忍び込む』

今月で第40回を数えた「東映テレビドラマLEGACY」。今後もご愛読のほど、よろしくお願いします。さて、今回ご紹介するのは1985年の『火曜サスペンス劇場』作品より、『悪魔が忍び込む』です。放送日は7月2日で、この回より、エンディング・テーマが1年ぶりにリニューアルされ、3代目の「橋」から4代目の「25時の愛の歌」へと代わりました。『火サス』のエンディング曲は1981年の番組スタートから1987年の秋まで、6年間にわたって岩崎宏美が歌唱を担当。「25時の愛の歌」は、初代の「聖母(マドンナ)たちのララバイ」に続いて長く使用された曲なので、印象に残っている方も多いのではないでしょうか。ちなみに、1985年7月当時の『火サス』の裏番組にはフジテレビ『なるほど!ザ・ワールド』のほか、TBS『サーティーン・ボーイ』(主演:岡本健一)、テレビ朝日『ただいま絶好調!』(主演:舘ひろし)などがありました。

 

看護師として働いていた佐藤すみ子(浜木綿子)は、最初の結婚で長女・しのぶ(早川美也子)を産みましたが、夫と死別。女手ひとつで娘を育てていくため、クラブで働くようになりました。あるとき、すみ子は店長の冬木(睦五郎)から再婚の話を持ちかけられます。相手は、大手企業で部長を務める岩渕勝(伊東四朗)でした。岩渕は、すみ子に一目惚れ。しのぶという娘がいることも承知で、彼女との結婚を望んでいました。やがて、すみ子は勝の母・チカ(清川虹子)とも会い、岩渕との結婚と、チカと勝が暮らす家での同居を決断します。しのぶも、すでに小学生になっていました。

ところが、ある時期を境に、チカは急に、すみ子やしのぶに冷たくあたるようになりました。老人会でチカと仲良くしている吉川(浅香光代)という女性からも、すみ子は嫌味を言われる始末。どうやらチカは、あることないこと、老人会で仲間たちに吹聴しているようでした。なぜ、チカの態度が急変したのか? その時点では、すみ子には全くわかりませんでした。義母や自分をいじめるチカへの嫌悪感から、しのぶはチカに対し、激しく反抗するようになります。しかし、その程度のことで、チカが怯むことはありませんでした。

ただし、チカは持病を抱えていました。狭心症です。すみ子がチカを病院へ連れて行ったところ、武内医師(横光克彦)は2種類の薬を出してくれました。武内は、すみ子が元・看護師だと聞き、「力強い味方がいる」とチカを励ましますが、そんなことで、チカのすみ子に対する感情は変わりません。むしろチカは、自分がすみ子に殺されるかもしれない、などと人聞きの悪いことを遠慮なく、言い出すようになっていきます。

そしてまた、ある日のこと。チカは、しのぶの反抗的な態度に腹を立て、そのために狭心症の発作を起こしました。すみ子が外出していたこともあり、チカは自分で急いで薬を探しますが、なぜか、置いてあるはずの場所に薬が見つからず……!

 

というわけで、ここまで読んでいただいた方は、この作品に「嫁・姑の関係を軸にしたサスペンス」といった印象を抱かれたことでしょう。それ自体に間違いはありません。「嫁」であるすみ子に対して、これでもかと悪態をつくチカ。清川虹子さんの、「一般視聴者に嫌われても構わない」と言わんばかりの熱演ぶりが光ります。当時、すでに70歳を過ぎていたとはいえ、本作の2年前に映画『楢山節考』に出演するなど、第一線で活躍を続けていた清川さんに加え、劇中のチカの「援軍」として、剣劇女優として知られた浅香光代さん(老女・吉川役)も参戦しているのですから、すみ子も分が悪そうです。ひたすら耐え続ける、すみ子。彼女にとって最大の味方は娘のしのぶであり、また夫の岩渕勝であるはずなのですが、しのぶの態度が母・チカを苦しめている一因になっていると考えた勝はやがて、しのぶに対しても疑念を持つようになり、すみ子と勝の間にも、深い溝が……。

 

そんな本作ですが、前半で張られていた伏線が、後半で見事に回収されていきます。密度的には、後半は前半の倍くらいのイメージ。チカのすみ子に対する態度が急に変わった原因は何か? 大事な薬の置き場所は、どうして変わっていたのか? そして、それは「誰」が変えたのか? さまざまな謎が明らかになっていくのと並行して、憎しみが支配していた物語の中から「愛」が見えてくるという構造が秀逸で、「嫁・姑の話は苦手だな……」という方にも、ぜひご覧いただきたい作品となっています。もちろん、タイトルに「悪魔」と入っているように、人間の<悪意>もポイントなので、随所で発見できる<悪意>の巧みな描かれ方にも、ご注目ください。

最後に、例によって、ストーリー紹介部分で触れられなかった、他のキャストについて紹介しておきましょう。勝の兄で、チカとの同居を拒否していた岩渕修を演じたのは、穂積隆信さん。老人会「憩いの家」における長老格の老人を演じたのは、当時87歳の佐々木孝丸さんでした。資料によれば、本作が長いキャリアにおける最後の作品である可能性が高そうです。後半、重要な「証言者」として登場する堀川朋子を演じたのは、1980年代の時代劇や刑事ドラマでは欠かせない存在だった佐藤万理さん。しのぶが通う小学校の用務員は相馬剛三さんが演じています。

……それでは、また来月の当コラムにて、お会いしましょう!

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

<6月の『Gメン’75』>

6月が初回放送となるエピソードは、第47話から第56話。第47話「終バスの女子高校生殺人事件」は、ラストで明かされる事件の「真相」に衝撃を受けること間違いナシの傑作回です。その他にも第49話「土曜日21時のトリック」や、第56話「魚の眼の恐怖」など必見回が続々登場。ぜひ、ご期待ください。

 

【違いのわかる傑作サスペンス劇場/2022年6月】

<放送日時>

『悪魔が忍び込む』

6月3日(金)11:00~12:50

6月14日(火)21:30~23:30

6月27日(月)21:30~23:30

 

『女が見ていた』(監督:鷹森立一/主演:泉ピン子)

6月2日(木)13:00~15:00

6月10日(金)11:00~13:00

6月23日(木)22:00~24:00

 

『異人館の遺言書』(原作:和久峻三/出演:フランキー堺、春川ますみほか)

6月16日(木)11:00~12:00

6月24日(金)11:00~12:00

 

『暗い穴の底で』(原作:菊村到/脚本:長坂秀佳/監督:天野利彦/主演:近藤正臣)

6月17日(金)11:00~12:00

6月24日(金)12:00~13:00

2022年5月31日 | カテゴリー: その他
その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY                                                                          第39回『奥多摩殺人渓谷』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1982年の『土曜ワイド劇場』作品より『奥多摩殺人渓谷』をご紹介します。本作の原作は、山岳推理小説で人気のあった太田蘭三先生です。1978年に刊行された「殺意の三面峡谷 渓流釣り殺人事件」が翌年、『土曜ワイド劇場』にて映像化。主人公の釣部(つるべ)渓三郎を緒形拳さん、ヒロインの女子大生・上條アキを、当時20歳だった池上季実子さんが演じました。すでに東映チャンネルにて放送されたので、ご覧になった方も多いでしょう。

『奥多摩殺人渓谷』は、その直接の続編にあたります。第2作まで3年という長い時間が空いたものの、緒形拳さんと池上季実子さんの「再共演」が実現しました。当時、緒形さんは主演映画『野獣刑事』が公開されたばかり。『火曜サスペンス劇場』で長く続いた『名無しの探偵』シリーズのスタートも、この年でした。一方の池上さんは、前作の放送と同時期に公開された『太陽を盗んだ男』以降、映画の出演についてはブランクがあったものの、テレビドラマで大活躍。このコンビは翌年(1983年)の映画『陽暉楼』において、女衒と芸妓の父娘という形でまたまた共演を果たすのですが、『土ワイ』の「釣部」と「アキちゃん」としては、「年の離れたカップル」を、実に爽やかに演じています。

 

前作のラストで渡米した上條アキは、帰国して早々、奥多摩へ山登りに出かけました。しかし運悪く、そこで男性の死体を発見してしまいます。アキは、すぐに警察へ連絡。亡くなった男性は釣り人らしく、落石事故に巻き込まれたものと思われました。死体のそばには、魚籠(釣った魚を入れる容器)が転がっていましたが、魚籠の中に入っていた魚については梅林刑事(穂積隆信)が「ヤマメだ」と言う一方、今西巡査(相馬剛三)は「アマゴです」と主張。このやりとりを聞いたアキは、事件の真相を突き止めるためにも、釣部渓三郎という推理作家に意見を求めたほうが良いと提案します。どうやらアキは、何かの理由をつけて釣部と久しぶりに会いたかったようです。前回の事件にも関わった人物で、釣部とは友達付き合いをしている北多摩署の「サワさん」こと大沢警部(大坂志郎)が、釣部に連絡。釣部はアキと再会を果たしますが、会った途端に釣部とアキは大喧嘩をしてしまいました。機嫌を損ねて、ひとりでさっさと帰ってしまうアキ。釣部は、アキの複雑な心理がつかめず、戸惑うばかりでした。

そんな釣部でしたが、「ヤマメか、アマゴか?」という問題については、アキが想像していた通り、明快な回答を述べます。魚籠に入っていたのはアマゴ。しかし、死体が発見された現場の付近では、アマゴを釣れるはずがない。このことから、本件は事故ではなく、殺人の可能性が高まりました。何者かが、釣り人の事故だと見せかけるべく、現場まで、死体を「運んだ」のです。しかし犯人は、アマゴという手がかりを残してしまっていました。ここから考えられるのは、犯人は釣りの知識があるものの、ヤマメとアマゴの違いまでは見分けられなかった人物、ということになります。

やがて、被害者の身元が判明しました。金融ブローカーで、前科もある高峰という男。大沢警部たちは、亡くなる前の高峰の動きを調べ、「大宝観光」という観光会社に辿り着きました。高峰は、この会社の常務(深江章喜)と秘書課長(黒部進)に接近し、融資の話を持ちかけていたのです。常務たちは、高峰との関係を即座に否定。しかし、「大宝観光」の経営状態が悪化していたことは確かで、大沢警部の中で、疑惑は拭えませんでした。

そんなとき、もうひとつの事件が発生します。アキの友人の郁代(藍とも子)と静子(花條まり)が、奥多摩へ登山に行ったまま、帰ってこないのです。2人と一緒に山へ行き、法事に出席するため先に下山したアキは、責任を感じます。静子の母(月丘千秋)や、静子と結婚することが決まっていた観光会社の社員・船岡(谷隼人)も心配する中、最悪の事態が……。

 

……というわけで、前作では父親(伊豆肇)を殺害されたヒロイン・アキちゃんは、本作では、2人の親友まで失ってしまいます。

そんな状況でも、明るさを失わないのがアキの魅力。寂しさを紛らわせるためなのか、釣部が暮らすマンションへ「押しかけ女房」的にやって来て、料理を作ったり、シャワーを浴びたり……。池上さん(アキ)と緒形さん(釣部)のやりとりが面白く、このキャスティングで第3作以降も観てみたかったと思わせてくれます(翌年の第3作では、近藤正臣さんと斉藤慶子さんが引き継ぎました。その後も林隆三さんや浅野ゆう子さんが出演し、シリーズ自体は第7作、1992年まで続きます)。

なお、第1作に続いて「山岳指導」としてクレジットされているのは、東映の名バイプレーヤーで、本作では巡査役で出演もしている相馬剛三さん。擬斗の遠矢孝信さん(なぜか本作では「考信」とクレジット)は、かつて『宇宙猿人ゴリ』(71年)で、天才科学者・ゴリ博士を演じていたスーツアクターとしても知られています。

……それでは、また来月の当コラムにて、お会いしましょう!

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

 

<5月の『Gメン’75』>

5月が初回放送となるエピソードは、第39話から第46話。そして、4月末から引き続いて、5月1日(日)~5日(木)の22:00~26:00は、【GWイッキ見!まだ間に合う!『Gメン’75』】。第21話~第40話までが1日に4話ずつ、キャッチアップ放送されます。こちらもぜひ、お楽しみに。

さらに! オリジナル情報番組『ピンスポ!』における、藤田三保子(当時:藤田美保子)さんのスペシャル・インタビューPART2も放送。初代女性Gメン“響圭子”こと藤田さんが語る、鮮烈な撮影エピソードの数々をご堪能ください!

 

【違いのわかる傑作サスペンス劇場/2022年5月】

<放送日時>

『奥多摩殺人渓谷』

5月7日(土)20:00~22:00

5月13日(金)11:00~13:00

5月27日(金)13:00~14:50

 

『女の中の風』(脚本:橋本綾/出演:浅野ゆう子、加藤治子、山岡久乃ほか)

5月20日(金)11:00~13:00

 

『別れてのちの恋歌』(監督:井上昭/出演:大竹しのぶ、堤真一、田中邦衛ほか)

5月27日(金)11:00~13:00

 

『死の断崖』(監督:工藤栄一/出演:松田優作、夏木マリほか)

5月17日(火)11:00~12:50

 

『百円硬貨』(原作:松本清張/脚本:橋本綾/監督:野田幸男/主演:いしだあゆみ)

5月25日(水)16:00~17:00

 

『雪の螢』(監督:浦山桐郎/主演:大空眞弓)

5月7日(土)5:00-6:00

 

2022年4月28日 | カテゴリー: その他
かめぽん

チューもく!! ゴールデンウィークもエンターテインメント三昧。 おうちでも楽しもう

5月のラインナップをみて、かめぽんが一番に食いついたのは「東映特撮映画の世界」で放映される「飛びだす冒険映画 赤影」。
おばあちゃんと観に行ったのよ、これ!
赤と青のセロファンが張ってある立体めがねをかざしながら、3D(らしき映像)を堪能した思い出の作品。
当時としては画期的だったのだと思う。
わくわくしたし、ものすごく覚えている。
ちょっとめがねをずらすと、イラストのような映像だった。←あくまでもイメージです。
後年、ディズニーランドでキャプテンイオを観たとき、本当に素晴らしい立体映像に感動したんだけど、赤影の立体映像はかめぽんの3D体験の原点。
本当に、本当に楽しい思い出として心に残っている。
今回は残念ながら3D映像では観られないのだが、昔を思い出して立体めがねを手に作品を楽しもうと思う。

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さて、今月の東映チャンネル硬軟取り混ぜてのラインナップ。
「日本国憲法75年【特集 占領下の日本政治】」も楽しみ。
一時、この特集で流れるような作品を観まくった時期があったのと、「吉田茂」は放映もリアルタイムで視聴した作品。
ぜひ録画して残しておこうと思う。
「名作アニメスペシャル」は大好きな「わんわん忠臣蔵」が4Kリマスター版で観られるし。
任侠映画は「連続放送! 昭和残侠伝」「一挙放送! 緋牡丹博徒 Vol.2」「連続放送! 兄弟仁義 Vol.3」とたっぷり。
もちろん「スーパーヒーロー スペシャル」も「2か月連続企画 銀河鉄道999特集」もあるのでちびっこたちともご一緒に。
ああ、メーテルと鉄郎の旅も終着を迎えるのね…

今年のGWは近場に旅行に行ったり、お買い物に行ったり、少しは日常が戻るといいな。
あとひと踏ん張り。
しんどくなったときは喜怒哀楽が豊富な東映チャンネルの作品でリフレッシュ。

今月もわくわくな東映チャンネル、お楽しみに!

2022年4月28日 | カテゴリー: かめぽん
かめぽん

チューもく!! 昔の東京を堪能できて、おなじみの方の若かりし頃も味わえる。 渋い名作、警視庁物語

かめぽんの連れ合いはかめぽん以上に東映チャンネルが好き。
その彼がいまドはまりしているのが「警視庁物語」。
刑事さんたちが渋い。
中でも人情派ぽい花沢徳衛さんや、悪人ではない神田隆さん、山本麟一さんなんかかめぽんの大好物の方々が。
昔、こういう四角く角張った顔の方多かったような気がする。
安部徹さんとか佐分利信さんとかもそう。
時代とともに日本人の顔も変わったなあと思う。
と、話はそれちゃったけど。
3月に放映された「警視庁物語 十二人の刑事」では初々しくも美しい佐久間良子さんや、男前な曽根晴美さんが恋人同士で出ていた。
曽根さん、目がキラキラ。
その後スターになられた方や名脇役の方々がみな若く、溌剌としている姿を探し出したときの喜び。
バイプレーヤーズ好きには宝箱のようなドラマだ。
今月も「警視庁物語 謎の赤電話」「警視庁物語 19号埋立地」の2本を放映。
さて、どんな方を見つけ出せるか楽しみだ。

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さて、今月の東映チャンネルは春休み恒例の「スーパーヒーローCLIMAX 春の陣」
かめぽんは「機界戦隊ゼンカイジャー THE MOVIE 赤い戦い!オール戦隊大集会!!」が楽しみ。
歴代レッド総登場なんてわくわくだもの。
怖いもの好きな方は「日本のヤバい村 LEVEL2」。
ジャパニーズホラーってじわじわきて、本当に怖い。
個人的には田村正和さん主演の「八つ墓村」が楽しみ。
アニメは009や銀河鉄道999とどんぴしゃ好みだし、「特集 クライム・サスペンス」では「クリーピー 偽りの隣人」も。
24時間じゃ足りない。
人生も終盤にかかると本当に1日が早く過ぎちゃう。
悔いなき人生のために、素晴らしい作品を堪能して、異世界への旅に出かけよう。
実世界での旅行はもう少し我慢かな。

今月もわくわくな東映チャンネル、お楽しみに!

2022年4月1日 | カテゴリー: かめぽん
その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY                                                                   第38回『児童心理殺人事件』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1989年(平成元年)の『木曜ゴールデンドラマ』作品より『児童心理殺人事件』をご紹介します。

『木曜ゴールデンドラマ』は、『火曜サスペンス劇場』と同じく、日本テレビ系列の2時間ドラマ枠でした。と言うより、スタートしたのは『火サス』よりも先。1980年の4月改編にて放送が開始され、当初は読売テレビ(大阪)と日本テレビ(東京)が交替で制作を担当していましたが、『火サス』が1981年の秋の改編でスタートすると、それ以降は読売テレビが単独で制作を手がけるようになりました。

第1回放送(1980年4月3日)作品は、水谷豊の主演による『熱中時代スペシャル 水谷教授の華麗な冒険』。海外ロケを大々的に敢行し、華々しくスタートしました。第3回は東宝映画の田中友幸プロデューサーが携わった最初で最後の2時間ドラマとなった『東京大地震マグニチュード8.1』。当時、裏番組には『ザ・ベストテン』というお化け番組がありましたが、『木曜ゴールデンドラマ』も安定した視聴率を稼ぐ番組となり、1992年の春の改編で終了するまで、12年にわたって続きました。その後、『ドラマシティ’92』『ドラマシティ’93』などを経て、1993年の秋の改編で「木曜夜10時」に登場した『ダウンタウンDX』は、間もなく放送開始から30年を迎えようとしています。

 

『児童心理殺人事件』は、1989年・真夏の放送。原作は森村誠一先生の「精神分析殺人事件」でした。これを脚色したのが、長坂秀佳さん。とはいえ、タイトルだけでなく、内容もほぼ「別物」と言えるような作品となっています。

当時、長坂さんは10年間にわたってメインライターを務めた『特捜最前線』が1987年の春に終了し、続いて昼帯ドラマ『華の嵐』(88年)の原作・脚本に着手しますが、序盤の脚本を執筆していた時期に局のプロデューサーと衝突して降板。この大ヒットドラマの「原作者」として名前は残ったものの、スケジュールが真っ白になってしまったため、今度は一定期間、脚本家を休業して「江戸川乱歩賞」に挑戦しました。

そして、ここで見事に賞を獲ってしまうのが、長坂さんのスゴさ。第35回「江戸川乱歩賞」を受賞した「浅草エノケン一座の嵐」の初版発行は1989年9月なので、『児童心理殺人事件』はおそらく、受賞作を書き上げ、応募してから書かれた、脚本家への「復帰作」のひとつだったと思われます。

 

ある夏の日。小学生の波島慎一くんが、セミを捕ろうとして団地のベランダによじ登りました。2階の部屋で黙々と仕事をしていた教師の中原桂介(角野卓造)は、ふとベランダのほうを見たとき、慎一くんと目が合ったのでビックリ。そして、その直後、慎一くんの姿が、桂介の視界から消えました。慎一くんは、どうやら転落してしまったようです。桂介がベランダに出て見下ろすと、倒れている慎一くんを囲む、少年たちの姿が。間の悪いことに、桂介は、その少年たちとも目が合ってしまいました。

周りの大人たちに事情を聞かれた少年たちは、「あのおじさん(=桂介)が『コラッ!』と怒鳴ったので、慎一くんはそれに驚いたので転落した」と証言。もちろん、桂介は怒鳴ってなどいないのですが、少年たちは彼らなりに、慎一くんが転落したことに責任を感じ、咄嗟に、現実ではない記憶を「作り上げた」のかもしれませんでした。こうして、桂介は窮地に立たされます。少年たちのところへ行って、「怒鳴ってなどいないじゃないか」と言い聞かせるのですが、それでも少年たちが証言を変えようとしないので、思わず怒鳴ってしまいました。これで、桂介への周囲の印象はさらに悪化。妻の不在をいいことに、桂介が部屋へ女性を連れ込んでいた、などという噂まで出始めました。

やがて、息子の草太を連れて信州へ行っていた桂介の妻・夏子(泉ピン子)が、夫が巻き込まれた「事件」のことを聞いて、帰ってきました。夫を信じる夏子は、誤解を解くために、独自で「事件」の調査を開始。当初、旗色が悪かった中原家ですが、夏子の辛抱強い聞き込みや推理もあって、この「事件」に秘められた意外な真相が見えてくるのでした……。

 

本作で描かれている事件のポイントは、「なぜ慎一くんが転落したのか?」にあります。この真相に、劇中の登場人物たちが辿り着くまでの絶妙な語り口は、さすがに長坂さんの脚本だけあって、凡百の2時間ドラマとは一線を画しています。

また、ある意味で「被害者」でもある「中原家」という家庭も、そして慎一くんの「波島家」も、それぞれ子育てにおいて深い悩みを抱えているという設定がドラマを引き締めていました。慎一くんの両親を演じているのは、辰巳琢郎さんと平淑恵さんです。

ところで、泉ピン子さんと角野卓造さんの「夫婦」というキャスティングには、誰もが既視感を抱くことでしょう。言うまでもなく、『渡る世間は鬼ばかり』です。この作品は、1990年の秋からスタートし、2011年まで断続的に全10シリーズを放送。その後も2019年まで、ほぼ毎年のペースでスペシャル版が放送されていました。『児童心理殺人事件』は『渡鬼』がスタートする約1年前の単発ドラマですが、放送時間が後の『渡鬼』と同じく「木曜夜9時」からだったことは、面白い偶然と言えるでしょう。『児童心理殺人事件』が放送された翌月、『木曜ゴールデンドラマ』にとって長年のライバルだった『ザ・ベストテン』が終了。TBSはこの後、「木曜夜9時」枠にドラマを編成し、最初のヒット作となったのが、1990年1月から放送された『HOTEL』でした。1988年の秋からはフジテレビも「木曜夜9時」枠で『とんねるずのみなさんのおかげです。』をスタートさせており、この枠は特に平成初期において、各局がしのぎを削る「激戦区」だったのです。

……それでは、また来月の当コラムにて、お会いしましょう!

 

<4月の『Gメン’75』>

4月が初回放送となるエピソードは、第31話から第38話。ついに、と言うか、早くもGメンの行動隊長・関屋警部補(原田大二郎)が殉職を遂げます。第33話「1月3日 関屋警部補・殉職」は、日本の刑事ドラマ史上、屈指の「殉職」編。クライマックス数分の、衝撃の演出に絶句してください。

そして、4月26日(火)~30日(土)の22:00~26:00は、【GWイッキ見!まだ間に合う!『Gメン’75』】と題し、第1話~第20話までが1日に4話ずつ、キャッチアップ放送されます。こちらもぜひ、お楽しみに。

さらに! オリジナル情報番組『ピンスポ!』では、初代「女性Gメン」として、強烈な印象を残した藤田三保子(当時:藤田美保子)さんが登場。「響圭子」を演じた日々の思い出を、熱く語ってくださいます。『Gメン』ファンのみなさんは必見です!!

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

【違いのわかる傑作サスペンス劇場/2022年4月】

<放送日時>

『児童心理殺人事件』

4月1日(金)19:00~21:00

4月7日(木)13:00~15:00

4月12日(火)21:30~23:30

4月19日(火)23:00~25:00

 

『恋人交換殺人事件』(原作:赤川次郎/出演:池上季実子、柴俊夫、名古屋章ほか)

4月2日(土)22:00~24:00

4月8日(金)13:00~15:00

4月13日(水)21:30~23:30

4月21日(木)13:00~15:00

 

『尊属殺人事件』(出演:辰巳柳太郎、浅茅陽子ほか)

4月19日(火)14:00~15:00

 

『消えた男』(監督:堀川弘通/出演:緒形拳、秋吉久美子、中条静夫ほか)

4月26日(火)14:00~15:00

2022年3月31日 | カテゴリー: その他
かめぽん

チューもく!! 何から何まで真っ暗闇…先が見通せないからこそ、光を求めたい

小学生の頃、耳を押さえながら着流しで歌うおじさんがいた。
何から何まで真っ暗闇よ〜
学校でその仕草と「古いやつだとお思いでしょうが…」という台詞が流行ったっけ。
意味もわからず、その歌を唄っている方もよく知らず。
ただただ印象に残るフレーズをまねしていた昭和の子供、かめぽん。
青江三奈さんの「伊勢佐木町ブルース」の「チャラチャチャラララララ、あ〜ん、あ〜ん」なんてみんな真似してたし。
ちびまる子ちゃんの世界はリアル昭和世代なのだ。
と、話は横にそれたけど。
そのおじさんが鶴田浩二さんだと認識したのは、TVで観た「新選組」の近藤勇を演じたときだったと思う。
新選組大好きかめぽん、見逃すはずがありません。
その後、映画やTV作品もたくさん拝見し渋い方だと知ったけど、やはりかめぽんにとっては永遠の真っ暗闇のおじさん。
鶴田さんが亡くなった病名もお歳もかめぽん父と同じで、自分がその年齢に近づくほど、ああもっといろいろなことができただろうなと心から思います。
お年を召した彼の渋いお芝居も拝見したかった。

その鶴田さんは「任侠興亡史 組長と代貸」「日本暴力団 組長くずれ」「遊侠三代」などでお目にかかれます。

202203

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今月は時代劇がかめぽん好み。
生誕120年【月形龍之介の水戸黄門漫遊記】では水戸黄門映画を。
それもモノクロ版のなかなかお目にかかれない作品ばかり。
大好きな橋蔵さんの「新吾二十番勝負大会」や錦ちゃんの「江戸っ子繁昌記」、桜の時期に観るのもよしな「忠臣蔵 櫻花の巻・菊花の巻」。
それと鶴田さん主演の「いれずみ判官」も
「一挙放送! 日本女侠伝」では朝ドラで話題の菊之助さんのお母様、藤純子さんを堪能。
かめぽんの旦那さんは「連続放送! 警視庁物語」の大ファン。
すごく面白いといつも暑く語ってます(笑)

特撮、ミステリー、任侠ものから現代劇まで幅広い東映チャンネル。
こうしてエンターテインメントを楽しめる幸せ。
早く紛争が終わるよう、祈りを込めて。

今月もわくわくな東映チャンネル、お楽しみに!

2022年3月2日 | カテゴリー: かめぽん