その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第37回『面影は共犯者』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、先月に続いて1985年の『火曜サスペンス劇場』作品より『面影は共犯者』をご紹介します。先月の『黄色いコートの女』は4月下旬の放送でしたが、『面影は共犯者』はその3ヶ月前、1月22日の放送でした。ちなみに、この年の『火サス』は1月1日の夜にも休まず放送されており、作品は『黒いドレスの女』。北方謙三先生の原作で、1987年に主演・原田知世で映画化された作品……ではなく、フランスの小説家であるジョゼフ・ケッセルの「恋路」(54年)を、小山内美江子先生が脚色した作品でした。主演女優は、大原麗子さん。その後、1月の主演は三田佳子さん、山本陽子さんと続き、4週目の本作が浜木綿子さんでした。浜さん×火サスの人気シリーズとして知られる『監察医・室生亜希子』がスタートするのは、1986年の暮れのことです(以降、2007年まで継続)。

『面影は共犯者』の原作は、夏樹静子先生。「小説現代」の1973年7月号で発表された作品で、後に読売新聞社から刊行された短編集「砂の殺意」(1974年10月発売)に収録されました。表題作である「砂の殺意」も、1981年に『木曜ゴールデンドラマ』にて映像化されています。

 

主婦・武原須美子(浜木綿子)と、夫である知之(江原真二郎)の夫婦関係は、いまや冷めきっていました。そもそも須美子が好きだったのは知之の弟で、カメラマンとして活動している俊彦(田村亮)だったのですが、知之が強引に須美子を奪ったのでした。それにもかかわらず、知之は家庭を顧みることなく、浮気を繰り返す日々。精神的に苦しんだ須美子は9年前、自殺を図ったのですが、俊彦によって助けられます。1年後、須美子は男の子を出産しましたが、それが知之でなく、俊彦の子であることを、須美子は分かっていました。時は流れ、その「秘密」を抱えながら、知之と暮らし続ける須美子。彼女はいまも、睡眠薬を常用していました。なぜなら、自分が殺される夢を、あまりにもよく見てしまうためでした。しかも、起きると、実際に首を絞められたような痕が残っているのです。須美子の身には多額の保険金もかけられており、夫が自分を殺そうとしているのではないかという彼女の疑念は、大きくなるばかりでした。

そんなある日、知之が出張することになりました。息子は、知之よりも遊び相手になってくれる俊彦のほうに懐いており、須美子の心の中で、「知之さえいなければ」という思いが次第に大きくなっていました。出張の詳しい行程を知之から聞いた須美子は、知之が常用している薬の中に、睡眠薬を混ぜることを思いつきます。車を運転中に知之が眠くなれば、その後で起こることは、予想がつきました。しかし、果たして須美子の狙い通りの結果が生まれるのでしょうか……?

やがて、知之は出張へ。そして、知之が睡眠薬を混ぜた薬を飲む「予定」となっていた日の翌日、箱根の警察署から、須美子宛てに電話がかかってきました。……やはり、「ご主人が亡くなりました」という、想像していた通りの連絡ではあったのですが、どうも、様子がおかしいのです。須美子が考えていたのと、知之の実際の死に方は違ったようで……。

いったい、出張中の知之に何が起こったのでしょうか? 一方、刑事たちは、須美子の言動にも、不審を抱いていき……。

 

と、いうわけで、須美子の「願い」は叶った反面、彼女が想定していなかった「何か」が起こったのは明白で、後半、物語はその謎に迫っていきます。殺人計画自体がうまくいった後で、その「綻び」が見つかって……というパターンはよくありますが、そういった類型的なプロットから微妙にズラしているところが、この原作の巧いところ。浜木綿子さんをはじめとする実力派のキャストが深みのある演技を見せ、視聴者による推理を一方向に絞らせないあたりも、本作の魅力だと言えるでしょう。

あらすじで紹介できなかったキャストとしては、知之の愛人・光子に高沢順子さん、俊彦を慕うスタイリスト・木崎よし子に三浦リカさん、事件を追う刑事に『西部警察』の井上昭文さん、『特別機動捜査隊』の和崎俊哉さんなど。須美子に睡眠薬を処方している医師を演じているのは、『機動戦士ガンダム』(79年)の主題歌「翔べ!ガンダム」の歌手としても有名な池田鴻さん(1988年、48歳の若さで逝去)でした。

それでは、また来月の当コラムにて、お会いしましょう!

 

<3月の『Gメン’75』>

第21話~第30話を放送。第23話から、原田大二郎さんが演じる関屋警部補がしばらく欠場となりますが、それに伴い、他のレギュラー刑事たちにスポットが当たる機会も多くなり、第25話「助教授と女子大生殺人事件」は、初めて津坂刑事(岡本富士太)の単独主演回となりました。また、第27話と第30話では、北海道ロケが敢行されています。

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

【違いのわかる傑作サスペンス劇場/2022年3月】

<放送日時>

『面影は共犯者』

3月4日(金)11:00~13:00

3月23日(水)22:00~24:00

 

『盗聴する女』(出演:浅野ゆう子/宮川一朗太/森次晃嗣/岡田茉莉子)

3月4日(金)13:00~15:00

3月18日(金)11:00~12:50

 

『花園の迷宮』(出演:斉藤由貴/杉本哲太/初井言榮/岡田茉莉子)

3月11日(金)11:00~13:00

 

『殺意』(出演:坂口良子/佐分利信)

3月2日(水)16:00~17:00

3月24日(木)11:00~12:00

 

『魔少年』(出演:松尾嘉代/森本レオ)

3月16日(水)16:00~17:00

3月25日(金)11:00~12:00

2022年2月24日 | カテゴリー: その他
その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第36回『黄色いコートの女』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1985年の『火曜サスペンス劇場』作品『黄色いコートの女』をご紹介します。原作としてクレジットされているのは、阿刀田高先生の短編集『街の観覧車』と『だれかに似た人』です。このうち『街の観覧車』は、当コラムの第7回で紹介した『観覧車は見ていた』でも、原作として使用されていました。『観覧車は見ていた』も『黄色いコートの女』も、脚本を高久進さん、監督を鷹森立一さんが務めており、2作の放送日も4ヶ月しか離れていないことから、2作はある意味「姉妹作」と言って良いかもしれません。その『観覧車は見ていた』も今月、放送されますので、ぜひ両作品ともにご覧ください。ちなみに本放送当時、『黄色いコートの女』の前週には、当コラムの第32回で紹介した『断罪』が放送されていました。

 

久保幸恵(中井貴惠)は、画廊も経営する裕福な画家・啓三(前田吟)と出会い、結婚しました。それは幸恵にとって、単なる結婚ではなく、誰にも言えないような苦労の後に、やとのことでつかんだ「幸福」でした。それゆえ幸恵は、この幸せを手放したくないと、強く思っていました。幸い、同居する夫の両親とも、良い関係を築くことができました。夫が、自分をまっすぐに愛してくれていることも感じられました。

そんなある日、幸恵に少しでも楽をさせようという夫の優しさから、久保家に通いの家政婦が雇われました。一橋友子(千石規子)というその女性は、家政婦としては優秀なのでしょうが、何を考えているかわからないところが少々あり、幸恵は苦手でした。

さらに、幸恵にとって、もっと深刻な事態が起こりました。幸恵の「昔の仕事」を知っている男と偶然、再会してしまったのです。その男とは、啓三とは対照的な貧乏画家・笠井三郎(火野正平)。笠井は、幸恵が過去を隠して結婚したことを突き止め、頻繁に接触し、口止め料や、さらに身体まで要求するようになります。脅迫がエスカレートしたため、幸恵は考えに考えた末、自分の過去を啓三に告白することにしました。幸恵の話を聞いた啓三は、烈火のごとく怒りました……。

絶望した幸恵は、やがて自分と同じような、あるいはそれ以上かもしれない絶望を抱えた女性・市村昌代(島かおり)と再会しました。メッキ工場を営んでいた夫の死で、大きな借金を抱え込むことになった昌代。2人の出会いがもたらすものは、果たして……?

 

当時27歳、2年後の1987年には結婚して女優を休業することになる中井貴惠さんが、元・風俗嬢だった主婦という意外な役どころに挑んだ作品です。同時期には、フジテレビの木曜夜10時枠のドラマ『間違いだらけの夫選び』にも出演されていました。

本作は、前半で主人公・久保幸恵をとりまく状況をじっくり描きます。2時間ドラマらしい展開、すなわち「事件」が起こっていくのは後半。それゆえ、印象としてはスローテンポに感じるかもしれませんが、後半の展開は濃密かつ怒濤で、しかも視聴者を良い意味で裏切る工夫もあり、さすが『Gメン’75』の名コンビが脚本、監督を務めた作品だと言えるでしょう。火野正平さん、千石規子さんはまさに「ハマり役」で、ドラマの緊迫感を高めていました。出番は少なめでしたが、暴力団員を演じた石橋雅史さんの凄味も印象的です。

そして、物語に深く関わってくるのが、渡哲也さんが1973年にリリースして大ヒットを記録した曲「くちなしの花」。どのように関わるのかは、実際の作品でご確認ください。

ちなみに2月の『Gメン’75』では、『観覧車は見ていた』『黄色いコートの女』と同じく脚本・高久進さん、監督・鷹森立一さんによる初期の傑作「バスストップ」(第13話)や、深作欣二監督による「Gメン皆殺しの予告」(第16話)、「背番号3長島対Gメン」(第20話)も放送。いよいよ本格的にエンジンがかかり始めた時期の『Gメン’75』にも、ご注目あれ!

それでは、また来月の当コラムでお会いしましょう。

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

 

【違いのわかる傑作サスペンス劇場/2022年2月】

<放送日時>

『黄色いコートの女』

2月11日(金)11:00~13:00

2月25日(金)11:00~13:00

 

『観覧車は見ていた』(出演:市毛良枝/丹波哲郎)

2月4日(金)11:00~13:00

2月15日(火)21:30~23:30

 

『授業参観の女』(出演:緒形拳/萬田久子)

2月2日(水)22:00~24:00

2月18日(木)11:00~13:00

2022年2月2日 | カテゴリー: その他
かめぽん

チューもく!! にゃんにゃんにゃんな猫の日、ぜったいにこの名作を見逃すな! 「こねこのらくがき/こねこのスタジオ」初放送!

かめぽん、猫大好きです。
物心ついたときには曾ばあちゃんが飼っていた、エメラルドグリーンの瞳の黒猫がおりました。
その子の血筋の猫たちが増え続け、最大実家に18匹も猫がいました。
かかりつけの動物病院の先生が団体割引だよと言って避妊手術の費用を安くしてくれ、猫の数は安定し、かめぽんが家を出る頃には5匹くらいに自然淘汰されておりました。
当時は完全室内飼いではなく、外に行くので戻ってこない子、事故に遭う子、病気をもらってきた子…
当時の寿命は10年くらいでした。
いま、子猫の頃公園で拾った黒猫がかめぽんの家の子になり、早9年を迎えます。
拾ってきた当初は野良の子というのもあり、いろいろ医療費がかかることが勃発しましたが、今はすこぶる健康。
風邪一つひきません。
室内で飼うというのは猫のためにはよいことなのだなと実感してます。
いつまでも元気でいてね。

さて、かめぽんがずっと待ち望んでいた「こねこのらくがき/こねこのスタジオ」が4Kリマスターになって登場です。
ずっと機会があれば視聴したいと思っていた作品が、ついに、ついに見られるのです。
かめぽんの大好きな森康二さん。
彼の描く動物は絶品でした。
丸くて、かわいくて、動きも自然で。
この時代、ディズニーにも負けない素晴らしいアニメーションが東映で作られていたのです。
誇らしいです。
永久保存版必至、ぜひご覧くださいね。

今月はねこアニメのほかにも気になる作品が目白押し。
<東映チャンネル×衛星劇場>『大怪獣のあとしまつ』公開記念【東映特撮映画の世界】は必見。
かめぽんが大好きな「怪竜大決戦」や大作「宇宙からのメッセージ」などを放映。
昔お仕事で松本清張作品をチャート化すたことがあり、その時にたくさん本を読んだので「松本清張ドラマスペシャル」も楽しみ。
活字と映像の違いも楽しんで。

今月もわくわくな東映チャンネル、お楽しみに!

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さて、かめぽん、人生初のグループ展に参加しておりました。
まん延防止等重点措置が出てしまい、あまり宣伝もできなかったのですが、楽しく作品を描くことができました。
その中から1部を公開。
この中に東映の人気TV作品3作が描かれています。
さて、なんでしょう(笑)

2022年2月1日 | カテゴリー: かめぽん
かめぽん

チューもく!! 明けましてのご挨拶。 今年も熱い作品をお届けしちゃいます

今年こそ、のんびり穏やかなお正月。
帰省も初売りも、初詣もと考えていましたが、コロナはなかなかそんな自由を許してくれませんね。
あらたなオミクロン株で、またしても世界は揺れ動いています。
かめぽん、昨年の12月に夢の国に行きましたが、皆さんマスクをきっちりされて、手洗い、消毒も。
日本人の律儀さが感染を押さえ込んでいる気がします。
しかし、さすがにくたびれてきましたよね。
多分、人と接すると無意識に緊張するんだと思います。
あ〜、早くすっきりと、楽しい日常に戻りたい。
今年こそはと心から思います。

 

さて、東映チャンネル。
お正月から飛ばしますよ。
「スーパーヒーローCLIMAX」は冬休み中のお子様と楽しめる企画。
もちろん、パパママ世代も楽しみる作品も。
「東映創立70周年記念 いま観ておきたい絶対名作30 Vol.3」は元旦にかめぽん大好きな「新幹線大爆破」の4Kリマスター版を放映。
何回見てもはらはらどきどきする名作です。
東映一押しの作品群をご堪能あれ。
7日は「名作アニメスペシャル」を一挙放送。
七草がゆをいただきながら、当時の日本最高レベルの作品を楽しんで。
「一挙放送! トラック野郎 後編」や「映画界最強の男 千葉真一特集 Vol.3」、かめぽん連れ合いが大好きな「連続放送! 警視庁物語」も。
深夜のお楽しみ「ロマンポルノ傑作選」からクイズ。
根岸吉太郎監督、小沼勝監督、田中登監督、長谷部安春監督、曾根中生監督、神代辰巳監督、武田一成監督と下記の作品を結びあわせてね。
「青春の蹉跌」
「丑三つの村」
「遠雷」
「サチコの幸」
「博多っ子純情」
「NAGISA」
「あぶない刑事」
多分2時間ドラマや「相棒」などのドラマシリーズでお名前を見た方も。
今回の特集は名作も多いのでぜひ観てみてね。

今月もわくわくな東映チャンネルをお楽しみに。
本年も東映チャンネルをよろしくお願いいたします。

202201

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに答えは根岸吉太郎監督「遠雷」、小沼勝監督「NAGISA」、田中登監督「丑三つの村」長谷部安春監督「あぶない刑事」、曾根中生監督「博多っ子純情」、神代辰巳監督「青春の蹉跌」、武田一成監督「サチコの幸」でした

2022年1月1日 | カテゴリー: かめぽん
その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第35回『第三の女』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1982年の『土曜ワイド劇場』作品『第三の女』をご紹介します。原作は、夏樹静子先生が1978年に発表された同名の小説。「第三の女」といえば、アガサ・クリスティの「名探偵ポアロ」シリーズの最末期に発表された作品のタイトルとして、ご存知の方も多いかもしれません。ちなみに、アガサ版「第三の女」はこれまで映像化の機会に恵まれていませんが、夏樹先生の『第三の女』は1982年版の後、1989年、2011年も映像化されています(詳しくは後述)。

スペインへのロケを敢行した本作は、1982年の7月から9月にかけて月イチペースで送り出されていた『土曜ワイド劇場』5周年記念企画の大トリでした。第1弾(7月放送)は連城三紀彦先生が原作の『戻り川心中』(主演:田村正和)。第2弾(8月放送)は、東映チャンネルでも過去に放送させていただいた、藤田敏八監督による『透明な季節』(主演:中野良子)。そして『第三の女』は、まさに「第3弾」でした。当時、『土曜ワイド劇場』を代表するヒットシリーズだったのが、天知茂さんが明智小五郎に扮する「江戸川乱歩の美女シリーズ」。1977年から、天知さんが急逝された1985年まで続きましたが、特に、井上梅次監督が一貫して担当していた1982年までが黄金期と言えるでしょう。その1982年は、まず1月2日に『天国と地獄の美女』を3時間スペシャルとして放送。そして長年、同時間帯番組として視聴率争いを続けてきた『Gメン’75』が最終回スペシャルを放送した4月3日にも、『土曜ワイド』側は『化粧台の美女』をぶつけました。このように、『土曜ワイド』の顔だった天知さんを主演に迎え、しかも「名探偵」ではなく「犯人」を演じさせたあたりに『第三の女』の「本気度」が感じられます。おいおい、いきなり「犯人」と書くなんてネタバレじゃないか……と思った方、ご心配なく。『第三の女』の推理ポイントは、別のところにありますので。

 

大湖浩平(天知茂)は、スペインのマドリッドにある大学で、助教授を務めていました。彼の専門は食品衛生学。マドリッドでは、小児癌に冒される子どもが増えていました。原因の一つとして有力だったのが、有害物質の入ったお菓子。ところが、大湖の上司である吉見教授(山形勲)は、お菓子メーカーと癒着しており、問題のお菓子の調査データを改竄したのです。そのため、お菓子の流通は続き、被害者も増え続けました。大湖が再調査を申し出ると、吉見はそれを拒否したばかりか、大湖に対し、別の大学への左遷人事をちらつかせます。いまや大湖にとって、吉見は「殺したいほど憎い人物」となっていました。

大湖は、自分の心を落ち着かせるため、休日を利用して、友人が別荘として利用している古城を訪ねました。ところがタイミング悪く、古城では仮装パーティが行われていたのです。大湖は仕方なく、自分も仮面を着けて、そのパーティに参加することにしました。

そのパーティの渦中で、大湖は運命的な出会いを果たします。なんと、自分と同じように「ある人物を殺したい」と考えている日本人女性がいたのです。彼女の名は、サメジマ・フミコ。お互いに素顔を明かさず、仮面のまま、2人は愛し合いました。

大湖にとって、その女性は忘れられない存在となりました。「もう一度、会いたい」と大湖は思いを募らせますが、2人をつなぐのは、ある「約束」だけです。それは「交換殺人」の約束。大湖がフミコの殺したい人を、そしてフミコが大湖の殺したい人を、それぞれ殺すという「約束」……これを最初に実行したのはフミコのほうでした。大湖のアリバイが成立する時間に、吉見教授を毒殺したフミコ。しかし、これで大湖のほうも「約束」を果たすしかなくなりました。大湖のターゲットは、美しき女性・永原翠(樋口可南子)。彼女を殺すため、日本へ帰国した大湖は箱根へ赴き、翠と接触します。そして、わずかなチャンスを逃すことなく、翠を絞殺。フミコとの再会を果たしたい大湖は、この事実をフミコに伝えたかったのですが、肝心のフミコの正体が、彼にはわかりません。翠のために夫を失った女性・久米悠子(あべ静江)や、翠にとっては異母妹にあたる永原茜(樋口可南子・二役)がフミコではないかと疑う大湖でしたが、この2人とは別に、「第三の女」がフミコである可能性も残されており……。

そのころ、マドリッド警察のマンリーケ警部(ポール・ナチィ)と私立探偵のマリア(ラ・ポーチャ)は、大湖が吉見に殺意を抱いていたことをつかんでいました。吉見の事件についてはアリバイがあった大湖ですが、来日したマンリーケ警部たちは、日本で起こった永原翠の事件との関連性に着目します。この2つの事件が「交換殺人」だったとしたら……!?

 

というわけで、物語の焦点は、仮面の女=サメジマ・フミコが誰なのか、に集約されていきます。表現を変えれば、「第三の女」は存在するのかどうか。「江戸川乱歩の美女シリーズ」においては明智小五郎として、見事な名推理と変装で奇怪な事件を解決していた天知さんですが、本作の「大湖浩平」役では、動機こそ「スペインの子どもたちを救いたい」というものながら、一つの出会いによって殺人犯へと転落していく脆い中年男性の姿を好演されました。そして、翠と茜の二役を演じた樋口可南子さん(当時23歳!)の魅力には、ただただ圧倒されます。1980年にはドラマ『港町純情シネマ』や『ピーマン白書』、1981年には映画『北斎漫画』に出演した樋口さんは、1982年になるとドラマ『女捜査官』に主演するなど、若手女優のトップへと躍り出ました。その後のご活躍は、あらためて触れるまでもないでしょう。

また、本作ではスペインと日本の警察が合同捜査を行う展開となりました。日本側の刑事には加藤武さん、石田信之さん、久富惟晴さんが扮しているほか、署長役で深江章喜さんも出演。このあたりのキャスティングの充実ぶりも、「5周年記念企画」ならではでしょう。特筆すべきはスペイン側の刑事をポール・ナチィ(ポール・ナッシー)が演じていること。ポールは1970年代のスペイン映画で狼男やドラキュラなどを演じて人気を博した俳優で、自ら脚本や監督を務めることも多かった、知る人ぞ知るスターなのです。そんな彼の出演作の中には、「アマチフィルム」がスペインの製作会社と共同で製作し、脚本・監督をポールが手がけ、狼男役をポール、戦国時代の医者を天知茂さんが演じた、『狼男とサムライ』という映画がありました。おそらく『第三の女』での天知さんとポールの出会いが、製作に至るひとつのきっかけとなっていると思われる怪作『狼男とサムライ』ですが、合作にありがちな(?)トラブルのため、日本にフィルムが到着して商品化(VHS)に漕ぎ着けたのは天知さんの急逝後のこと。ここからは推測になりますが、この作品の製作にまつわる心労が天知さんの寿命を縮めた可能性も否定できず……54歳という若すぎる死は、日本の映画・テレビドラマ界において、巨大なる損失でした。

 

さて、冒頭で触れた、その後の『第三の女』映像化ですが、主なキャスティングの推移は下記のようになります。

 

大湖浩平/天知 茂(1982)⇒永島敏行(1989)⇒村上弘明(2011)

永原 茜/樋口可南子(1982)⇒南野陽子(1989)⇒菊川 玲(2011)

永原 翠/樋口可南子(1982)⇒南條玲子(1989)⇒小沢真珠(2011)

久米悠子/あべ静江(1982)⇒大場久美子(1989)⇒高橋かおり(2011)

吉見教授/山形 勲(1982)⇒鈴木瑞穂(1989)⇒津川雅彦(2011)

 

こう見ると、やはり1982年版で翠と茜の異母姉妹を二役で表現していることは(結果的に、とも言えますが)大きな特色となっています。一方、1989年版の特徴は、主人公が永原茜となっていること。2011年版は時代を反映してか、浩平とフミコはネットを通じて知り合うという設定になっていました。

そうそう、「サメジマ・フミコ」のキャスティングについては上記で一切、触れていませんが、もちろん、ネタバレを避けるためなので、悪しからず……。

それでは、また来月の当コラムでお会いしましょう。

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

【違いのわかる傑作サスペンス劇場/2022年1月】

<放送日時>

『第三の女』

1月10日(月)20:00~22:00

1月21日(金)13:00~14:50

 

『超高層ホテル殺人事件』(主演:田村正和)

1月2日(日)15:00~17:00

1月21日(金)11:00~13:00

 

『駅路』(主演:古手川祐子)

1月7日(金)11:00~13:00

1月20日(木)13:00~14:50

 

『震える髪』(主演:秋吉久美子)

1月14日(金)11:00~13:00

1月25日(火)11:00~13:00

 

『行きずりの殺意』(主演:浜木綿子)

1月11日(火)13:00~15:00

1月28日(金)11:00~13:00

2021年12月24日 | カテゴリー: その他
かめぽん

チューもく!! ひと味違う金田一耕助を味わう「没後40年 横溝正史特集」

横溝正史ブームが起きたのはかめぽんが多感な頃。
映画の金田一耕助@石坂浩二さんも素敵だったけど、ドはまりしたのはTV版の古谷一行さんだった。
友達と競って金田一耕助ものの文庫本を読んだっけ。
当時描いたイラストにも金田一さん、ありましたよ。
そんなかめぽんが東映チャンネルの特集を知る前から、急に横溝先生の金田一ものが読みたくなって図書館で借り始めました。
昔買った本は実家とともになくなってしまったのだけど、絶版になった作品も多かったから持ってくればよかったなあ。
久しぶりに読んだ金田一シリーズ、なんか大人になって読むとまた新鮮。
仮面舞踏会はすっかり内容を忘れていたのだけど、後半のキーとなる場面から記憶が鮮やかによみがえってきて、面白い体験をしました。
記憶の中に印象的な場面は残っているのね。
さて、東映チャンネルの「没後40年 横溝正史特集」ひと味違います。
オーソドックスな金田一像は西田敏行さん演じる「悪魔が来りて笛を吹く」が唯一。
知恵蔵さんが演じた「三つ首塔」(原作がなかなかなまめかしくて子供にはドキドキした)と「獄門島 総集篇」は、ソフト帽の粋な金田一耕助。
健さんの金田一もダンディで内容も気になる「悪魔の手毬唄」
そして横溝先生、時代小説もお書きになっていたのだけど(人形佐七とか)、その中から「髑髏検校」。
演じるのは天草四郎がぴったりな田村正和さん。
美しいヴァンパイア役が楽しみ。

202112

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、残すところあとわずか。
かめぽんも新年用のお仕事でバタバタと過ごしておりました。
師走は慌ただしいけど、そんな時こそ足を止めてのんびり映画でも見ましょう。
スーパーヒーローにトラック野郎、千葉真一さん特集に時代劇、ミステリーまで盛りだくさんですよ。
「東映創立70周年記念 いま観ておきたい絶対名作30 Vol.2」ではバトル・ロワイヤル、柳生一族の陰謀、鬼龍院花子の生涯など盛りだくさん。
キン肉マンで笑ってもいいし、柳生武芸帳で息をのむような殺陣を堪能しても。

今月もわくわくな東映チャンネルをお楽しみに。
そして、来年も東映チャンネルをよろしくお願いいたします。

2021年12月13日 | カテゴリー: かめぽん